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森永貴子『北太平洋世界とアラスカ毛皮交易』

アラスカを始めとする北太平洋をロシアが開拓するために設立した、ロシア・アメリカ会社という会社についての簡潔な歴史を扱った短い本。ロシア・アメリカ会社は1799年に、ロシアの特許株式会社として設立された。特許株式会社とは王室や皇室から貿易独占権などの勅許を獲得した民間会社で、イギリスやオランダの東インド会社が典型例。ロシア・アメリカ会社は19世紀半ばまで、北太平洋で毛皮事業と植民経営を行った。16世紀に東進...

山中速人『ハワイ』

観光本が紹介するハワイを補完するように、観光本では見えないハワイのトピックを紹介している。ポリネシア文化とその復興運動、移民たちが織りなす虹のような多民族社会、ワイキキ観光開発の影の部分、日系人と太平洋戦争など。通時的な記述ではなく、トピックばらばらに論じていくのでやや一貫性を欠くようにも見える。著者が見るところ、日本人はハワイについて固定観念を3つ持っている(p.7-11)。一つは、ハワイに太平洋の楽園...

矢口祐人『ハワイの歴史と文化』

ハワイの歴史についての本。視点は近現代にある。こういった本では通時的に書かれることが多いが、本書では欧米との接触が盛んになる以前は最終章になっている。ネイティブハワイアンの歴史と文化を、今日のハワイ社会を理解するために必要な前史的な基礎知識に位置付けないために、最終章に置くという考え(p.8f)。話題は19世紀ハワイでのサトウキビ生産と、その労働力としてのハワイ移民から始まる。1837年には約2トンに過ぎなか...

岩崎育夫『物語 シンガポールの歴史』

とてもよく書けている。シンガポールの歴史についてのまず読むべき本だろう。独立以前の歴史はもとより、独立後の開発独裁の光と影、変化する社会に対して政府が苦悩する姿などよく書かれている。シンガポールはイギリスの植民地化によって誕生する。他の植民地と異なるのは、原住民がいてそれをヨーロッパが支配するのではなく、そもそもほとんどゼロから都市そのものが立ち上がったことだ。シンガポール建設の父ラッフルズの卓見...

太田泰彦『プラナカン 東南アジアを動かす謎の民』

プラナカンという東南アジアにおける華僑の子孫について書かれた一冊。新聞記者によるもので、歴史書というよりエッセイ風。総論、文化的特徴(食器やタイル、刺繍に見られる特徴的な色使い)、日本軍による破壊の歴史、いまなお各地に残るプラナカンたちへのインタビューと記述は続く。プラナカンは15-16世紀に中国南部、福建省や広東省からの東南アジアに移り、特にペナン、マラッカ、シンガポールに定着したもの。女性が出国す...

岩崎育夫『入門 東南アジア近現代史』

東南アジアの近現代を概観した良書。「多様性の中の統一」という、インドネシアの独立からの国是をキーワードとしている。東南アジアでは古来、一度も領域を統一した国家は生まれていない。かたやインドシナ半島の大陸国があり、かたや島嶼部からなる列島国家がある。言語も宗教も多様だが、特に近年はASEANという形で地域共同体を形成している。多様性のなかで東南アジアが模索する統一の形を分かりやすく提示している。本書は近...

リンダ・コリー『イギリス国民の誕生』

大部の本だがとても読みやすく、面白い一冊。18世紀から19世紀後半にかけて、イギリスにおいて「イギリス国民Britons」というアイデンティティがどう成立してきたのかを追っている。原著は出版時にかなりの話題になり、ここから影響を受けた歴史書が多く出ているようだ。名もなき庶民の記録から議会録などの公的な記録まで、多彩な史料を用いながらも、見通しよく論じている。想像の共同体よろしく、イギリス国民というのは作られ...

井野瀬久美惠『大英帝国という経験』

18世紀から20世紀に至る大英帝国の展開を描く。大筋を描くというよりは、あまり知られていないような細かなエピソードをつないでいく。商人だったり、労働者だったり、女性だったり。これは大英帝国について書かれた書物が多い中で、いかに本書の特色を出すか苦心した結果のようだ。大英帝国の展開が二つに分けられている。18世紀初頭からの、アフリカの奴隷をアメリカやカリブ海で用いて生産した砂糖やタバコなどをイギリスに持ち...

川北稔『イギリス 繁栄のあとさき』

近代イギリス経済史を中心として、イギリスの勃興に何を学ぶかを念頭に書かれた一冊。エッセイとして連続掲載されていたのを、まとめたもののようだ。ときおり、時事ネタや日本の状況についてのコメントが散見される。とはいえ、それは1995年くらいの当時のものなので、いまから見ると感覚もずれている。主題のイギリス史とはあまり関係しない。歴史家として何かを引き出そうとしているのだけれども。話の中心はイギリス近代を導い...

川北稔『イギリス近代史講義』

口述筆記によるイギリス近代史。口述筆記なので論の運びはややうねっていて、少し読みにくさを感じる。全体の筋の中で、この話は何をしたくて書かれているのかがよく分からないところもある。内容はイギリスの都市の成長、産業革命と植民地貿易、イギリス衰退論争。平易な形でその論点が知れる。あらゆる論点を通じてポイントなのは、イギリスのジェントルマンという身分。イギリスの都市の成立はなかなか見通しよく、面白い。イギ...