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岸上伸啓『クジラとともに生きる』

アラスカのもっとも北に位置して、北極海(ボーフォート海)に面するバロー村でのフィールドワークの結果。バローにいまだ根付いている捕鯨の文化を追う。特に鯨を捕ったあとの肉の分配に注目している。筆致はややエッセイ風で堅苦しくない。フィールドワークを行う人類学者個人の視点から多くが書かれている。第一章はどうやってバローでのフィールドワークにたどり着いたか。裏事情がいろいろ書かれていたりする。同じ場所で調査...

ウィリアム・プルーイット『極北の動物誌』

アラスカのタイガと呼ばれる亜北極、亜寒帯の針葉樹林の森を中心とした動物たちを描く。一章を一つの動植物に当て、その生涯や生活誌といった趣でエッセイ風に描いている。タイガを構成する樹木であるトウヒの一生を皮切りに、アカリス、ハタネズミ、ノウサギ、オオヤマネコ、オオカミ、カリブー、ムース。さらにティンジェ族の猟師たち、イタチ、ホームステッドの農場開発とその失敗、さらなる開発について。どれも筆致はなめらか...

バリー・ロペス『極北の夢』

油田などの資源開発調査や生態調査などに同行して、北極圏(そのやや南の地域を含む)を何度も旅してきた著者による一冊。かなり大部の本で、北極圏の地理から動植物、気候、先住民族、探検者と開拓者などについて語っている。北極といっても中心となっているのはカナダの北西部。グリーンランドとの境となるバフィン湾の西側の島々について。北極に生態系が形成されたのは意外にも、最終氷期(ウィスコンシン氷期)以降であり、わ...

森永貴子『北太平洋世界とアラスカ毛皮交易』

アラスカを始めとする北太平洋をロシアが開拓するために設立した、ロシア・アメリカ会社という会社についての簡潔な歴史を扱った短い本。ロシア・アメリカ会社は1799年に、ロシアの特許株式会社として設立された。特許株式会社とは王室や皇室から貿易独占権などの勅許を獲得した民間会社で、イギリスやオランダの東インド会社が典型例。ロシア・アメリカ会社は19世紀半ばまで、北太平洋で毛皮事業と植民経営を行った。16世紀に東進...

山中速人『ハワイ』

観光本が紹介するハワイを補完するように、観光本では見えないハワイのトピックを紹介している。ポリネシア文化とその復興運動、移民たちが織りなす虹のような多民族社会、ワイキキ観光開発の影の部分、日系人と太平洋戦争など。通時的な記述ではなく、トピックばらばらに論じていくのでやや一貫性を欠くようにも見える。著者が見るところ、日本人はハワイについて固定観念を3つ持っている(p.7-11)。一つは、ハワイに太平洋の楽園...

矢口祐人『ハワイの歴史と文化』

ハワイの歴史についての本。視点は近現代にある。こういった本では通時的に書かれることが多いが、本書では欧米との接触が盛んになる以前は最終章になっている。ネイティブハワイアンの歴史と文化を、今日のハワイ社会を理解するために必要な前史的な基礎知識に位置付けないために、最終章に置くという考え(p.8f)。話題は19世紀ハワイでのサトウキビ生産と、その労働力としてのハワイ移民から始まる。1837年には約2トンに過ぎなか...

岩崎育夫『物語 シンガポールの歴史』

とてもよく書けている。シンガポールの歴史についてのまず読むべき本だろう。独立以前の歴史はもとより、独立後の開発独裁の光と影、変化する社会に対して政府が苦悩する姿などよく書かれている。シンガポールはイギリスの植民地化によって誕生する。他の植民地と異なるのは、原住民がいてそれをヨーロッパが支配するのではなく、そもそもほとんどゼロから都市そのものが立ち上がったことだ。シンガポール建設の父ラッフルズの卓見...

太田泰彦『プラナカン 東南アジアを動かす謎の民』

プラナカンという東南アジアにおける華僑の子孫について書かれた一冊。新聞記者によるもので、歴史書というよりエッセイ風。総論、文化的特徴(食器やタイル、刺繍に見られる特徴的な色使い)、日本軍による破壊の歴史、いまなお各地に残るプラナカンたちへのインタビューと記述は続く。プラナカンは15-16世紀に中国南部、福建省や広東省からの東南アジアに移り、特にペナン、マラッカ、シンガポールに定着したもの。女性が出国す...

岩崎育夫『入門 東南アジア近現代史』

東南アジアの近現代を概観した良書。「多様性の中の統一」という、インドネシアの独立からの国是をキーワードとしている。東南アジアでは古来、一度も領域を統一した国家は生まれていない。かたやインドシナ半島の大陸国があり、かたや島嶼部からなる列島国家がある。言語も宗教も多様だが、特に近年はASEANという形で地域共同体を形成している。多様性のなかで東南アジアが模索する統一の形を分かりやすく提示している。本書は近...

リンダ・コリー『イギリス国民の誕生』

大部の本だがとても読みやすく、面白い一冊。18世紀から19世紀後半にかけて、イギリスにおいて「イギリス国民Britons」というアイデンティティがどう成立してきたのかを追っている。原著は出版時にかなりの話題になり、ここから影響を受けた歴史書が多く出ているようだ。名もなき庶民の記録から議会録などの公的な記録まで、多彩な史料を用いながらも、見通しよく論じている。想像の共同体よろしく、イギリス国民というのは作られ...

Appendix

プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。
しかし博士号は取らずPh.D. Candidateで進路変更。
哲学と特に関係なくIT業界に住んでいる。

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