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末木文美士『日本仏教史』

日本の仏教について思想史的側面から書かれた概説書。この分野で標準的に参照される一冊。多様な視点に目を配りつつも、とてもうまくまとまっている。誰もが読むべき良書。扱っているのは飛鳥時代の仏教伝来から江戸後期まで。協議や戒律の成立を中心に描かれている。美術的側面や民衆における受容、政治、また明治期以降の新仏教についての話題は少ない。仏教史の研究トレンドを踏まえつつ、この分野の面白さを十二分に語っている...

佐藤弘夫『鎌倉仏教』

鎌倉仏教 (レグルス文庫)鎌倉仏教について書かれた素晴らしい入門書。扱われているのは、法然、親鸞、日蓮、道元である。本書の特徴は、これら仏教者の思想のみならず、なぜそれが民衆に受け入れられたのかという視点から語っていることにある。鎌倉仏教はどのような時代背景で生まれ、何を民衆にもたらしたのか。なぜならば、「祖師の思想はいかに立派なものであっても、それ自体では何の意味もない。それは、名もなき人びとに受...

大貫隆『イエスという経験』

イエスという経験(2003/10/25)大貫 隆商品詳細を見るいわゆる「史的イエス」を巡る論考。旧約聖書・新約聖書に書かれている事項をそのまま(宗教的)史実であると受け取る態度への抵抗が著者にはあるようだ。この本では様々な宗教学者の「史的イエス」を巡る論考を踏まえながら、著者自身の読みを提示する。なかでも、イエスの言動を導いた動機となった根本的な考え、そしてイエスが人々に提示した「神の国」と呼ばれる考えを巡る...

大貫隆『グノーシス「妬み」の政治学』

グノーシス「妬み」の政治学(2008/07/18)大貫 隆商品詳細を見る「妬み」というキーワードでグノーシス主義を論じる意欲的な一冊。主に西方グノーシス主義(東方のマニ教ではなく、シリア・エジプト型)に重点を置きながら、その創造神話を個人の深層心理の物語として読み替える。この方法論としてタイセンの「歴史的宗教心理学」を採用している。それは「人間が自分の宗教的体験と行動に結びつける主観的な意味の内容と成立のプロ...

ミシェル・タルデュー『マニ教』

マニ教 (文庫クセジュ)(2002/02)ミシェル タルデュー商品詳細を見るマニ教についての概説書。マニ教の創設者であるマニの伝記から始まり、マニ教において聖典とされる書物をはじめとする教義文書について、マニ教の宗教共同体の特質について、そしてマニ教の世界神話について記されている。前3世紀に現在のイランで生まれたマニ教は、ゾロアスター教やペルシャ文化の背景を強く読み込む見方と、マニ自身が没頭したキリスト教の背...

大貫隆『グノーシスの神話』

グノーシスの神話(1999/01/27)大貫 隆商品詳細を見るグノーシス主義について書かれた本。グノーシス主義は2世紀前後にメソポタミアを中心として存在した宗教思想。善悪原理が根源的に存在するとする東方グノーシス主義と、善の原理を中心に語る西方グノーシス主義に分かれている。このグノーシス主義の研究は1950年台にナグ・ハマディ文書の研究が進むにつれて大きく進展した。本書は概説の文章とともに、実際の文献を訳すことによ...

大貫隆『聖書の読み方』

聖書の読み方 (岩波新書)(2010/02/20)大貫 隆商品詳細を見る旧約聖書・新約聖書の読み方について平易に語った本。聖書といえば信仰の書であり、キリスト教信仰を持たない人間にはやや縁遠い書物だ。しかも教条的な読み方があったり、現在の科学的見地と相容れない記述も散見される。旧約聖書の預言書であれ、新約聖書の福音書であれ成立過程は複雑であり、一人の著者による統一された書物とは言いがたい。ともあれ、聖書は読みにく...

梅原猛『梅原猛著作集〈10〉 法然の哀しみ』

梅原猛著作集〈10〉法然の哀しみ(2000/10)梅原 猛商品詳細を見るおよそ700ページに及ぶ大きな本。口述筆記の形を取っているので、そうでない他の多くの本と文体や論理の進め方で違いがある。同じ論点が繰り返し出てきたり、話の脱線があったりするので人によっては読みにくさを覚えるかもしれない。鎌倉時代の仏教僧である法然房源空について書かれた本で、彼の伝記的事項から、浄土宗を生み出すきっかけとなった善導の『観経疏』...

金龍静『蓮如』

蓮如 (歴史文化ライブラリー)(1997/07)金龍 静商品詳細を見る室町時代に浄土真宗を築いた蓮如についての本。浄土宗は法然・親鸞に始まるが、本願寺を中心とする組織体として浄土真宗を築き上げ、普及させたのは蓮如の功績が大きい。もともと浄土宗はただ阿弥陀仏のみを頼む/憑むものであり、社会倫理的な側面が薄い。既存の仏教諸派が浄土宗を攻撃したのはその理由もある。そうした蓮如の歩みを記した本だが、いまひとつ。組織構...

阿満利麿『法然の衝撃』

法然の衝撃―日本仏教のラディカル (ちくま学芸文庫)(2005/11)阿満 利麿商品詳細を見る浄土宗の開祖、法然について。その思想が持つ同時代や伝統への影響と断絶を語る。著者の問題意識に沿って自由に論が展開されるような趣もあるが、全体として統一を保っていて読みやすい。スタイルとしては学術的というよりは随想的なもの。著者は冒頭から、氏神・祖先信仰を支える仏教(現代では葬式仏教にこの役割が見られる)と、自らの魂の救...