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金谷治『中国思想を考える』

中国の思想のうち主に儒教と道教について書かれた一冊。中国思想の発展の歴史をたどることによって解説する本ではない。中国思想に見られる5つの特質を取り上げることによって、中国思想の独自性を明らかにしようとしている。この5つの特質とは、合理主義、 対待、中庸、死生一如、天人合一。おそらく一般向け講演をもとにして書かれた本のようで、とても平易で分かりやすい。歴史的経緯は追わないものの、中国思想の特徴がうまく...

梅原猛『仏教の思想 <上>』

それは、今や仏教は重要な思想的意味をになっているのに、まだ仏教は、わが国の多くのひとびとに、あまりにも知られていない。仏教の思想の中には、多くの宝が隠されているのに、その宝にういて、わが国のひとびとは、まったく無知なのである。もしも、多くの仏教学者が、未発掘の宝石を見いだす真理の坑夫であるならば、その宝石を、日本の多くのひとびとに伝える宝石の展覧人が必要なのではないか。(p.18f)もともとは十二巻本で...

井筒俊彦『意識と本質』

むしろ積極的に、意識を超えた意識、意識でない意識をも含めた形で、意識なるものを統合的に構造化しなおそうとする努力を経てはじめて新しい東洋哲学の一部としての意識論が基礎付けられるのであろう。またそこにこそ東洋的意識なるものを特に東洋的意識論として考察する意義がある、と私は思う。(p.101)ユダヤ、イスラム、インド、中国、日本の各思想を縦横無尽に渉猟。事物の本質とそれを認識する意識、という構図に各思想を類...

イマニュエル・カント『カント全集10 たんなる理性の限界内の宗教』

カントの理性哲学からする宗教の位置付け。タイトルは「端的に言って宗教は理性の限界内にしかない」ではなく「単に理性の範囲内からしか論じたにすぎない宗教論」の意味であろう。つまり全面的な宗教論ではないという遠慮がある。何に対する遠慮かというと、聖書神学を旨とする神学部。哲学者、というより大学の哲学部に属する教授が、宗教について語ることの慎重なエクスキューズが見られる(p.13-17)。哲学者が論じる限りでの宗...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 III 情動篇』

シリーズ第三巻は情動について。どちらかというと認知に偏りがちな心の哲学にあって、情動をメインに取り上げたのはとても面白い試み。本書で取り上げられているのは情動とは何か、という一般論だけではない。一般論を扱っている論文は一つだけ。後は、誘惑と自己制御、先延ばし、自己欺瞞、妄想といった具体的で身近な事例。情動によって判断が左右されるような事例が、どのように説明できるのかを巡っている。試みは果敢だが、い...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 II 意識篇』

意識について。引き続きこのシリーズは単純に認知哲学ではなく、神経科学との絡みのなかでの議論を基調としている。近年のこの分野の展開として、とてもあるべき姿だろう。話題はクオリアの性格という古典的問題から始まり、知覚経験の内容、知覚と思考の違い、意識の統一性、自我とは何か、意志とは何かを巡る6つの論文からなる。クオリアの性格を巡る議論は、レヴァインの説明ギャップの議論を扱う。それにより、いくつかの物理...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 I 認知篇』

認知についての哲学的論文集。5つの論文からなる。とても面白いことに、狭い意味での哲学には収まらない論考が多い。執筆者もいわゆる哲学の人間でなかったりする。フォーダーの概念原子論を中心とした、哲学における概念と認知科学におけるカテゴリー化の関わり。言語学や認知神経科学の視点を取り入れた、言語の認知への影響。行動経済学から見る、人間の思考の合理性。合理性に力点を置く、自己知と自己認知。ミラーニューロン...

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ『哲学とは何か』

DGの哲学の魅力は、国家、資本主義、精神病といったすぐれて人間の精神活動に関わるとされてきたものを、唯物論的に、機械によって論じるところにあった。少なくとも私にはそうだ。本書ではDGが哲学とは何か、というこれまたすぐれて人間の精神活動に関わる問題について論じる。しかし本書では従来の唯物論的視点はあまり見られない気がする。また哲学は科学、芸術と対比され、3つ組として論じられるのだが、この図式がカントやヘ...

三宅陽一郎『人工知能のための哲学塾』

生物は、自分の視点から離れた客観的な視点から世界をとらえて行動しているのではありません。生物は主観を通して、自分自身の視点や取捨選択した情報を通して行動を形成します。ですから、人工知能を外側から構築する、つまり、製作者の神の視点から構築したとしても、それは精緻な操り人形以上のものにはならないのです。人工知能に知能を与えようとすれば、その人工知能から見た世界を構築することが本質なのです。(p.285)ゲー...

山本芳久『トマス・アクィナス 肯定の哲学』

トマス・アクィナスの感情論を扱ったもの。トマス・アクィナスというと、スコラ哲学の集大成、大伽藍。微に入り細に入り論じられる存在論と神学が有名。素人目にはともするとその非常に細かい区分や議論の仕方が馴染めず、ポイントを感じられないことも多い。本書では感情論という、存在論に比べればずっと身近な話題を扱う。それによってトマス・アクィナス、ひいてはスコラ哲学の展開の仕方を平易に表す。のみならず、トマス・ア...
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