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北野宏明『Dr.北野のゼロから始めるシステムバイオロジー』

著者が開拓してきたシステムバイオロジー(Systems Biology; 英語表記はシステムが複数形)についての入門的解説。システムバイオロジーは1990年代から提唱されている。生命科学の研究では、遺伝子やタンパク質といった「モノ」それぞれを相手にする研究がメインとなってきた。こうした研究はそれらを含むシステムの動態という、物理的具体性を伴わない「コト」の研究への拡張が考えられる(p.13)。タンパク質などを構成要素とするシ...

吉川浩満『理不尽な進化」

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ 進化論についての本、というより進化論の思想、進化論の哲学についての本。論述は生物の絶滅に関するD.ラウプの3つの区分から始まる。古生物学の研究から、現在生存している生物種はかつて存在した種の1000分の1程度だと考えられている(p.36f)。こうした種の絶滅原因をラウプは3種類に分類した。それは(1)弾幕の戦場、(2)公正なゲーム、(3)理不尽な絶滅と名付けられている。弾幕の戦場とは隕...

齋藤紀先『休み時間の免疫学 第2版』

休み時間の免疫学 第2版 (休み時間シリーズ)(2012/02/17)齋藤 紀先商品詳細を見る主に医学部の学生向けに書かれた免疫学の副読本。書いてあることのレベルは落とさないながらも、整理して読みやすくしようとしている。タイトル通り、学習の休み時間に読むもの。教科書にあるような細かいレベルの事柄は書いていないが、全体の見取り図を得られるように配慮されている。内容は標準的なもの。体液性免疫と細胞性免疫のそれぞれの働き...

レスリー・ロジャース『意識する動物たち』

意識する動物たち―判断するオウム、自覚するサル(1999/05)レスリー・J. ロジャース商品詳細を見る動物の意識を巡って書かれた一冊。知性、計算能力、コミュニケーション能力、認知、心的表象、自己認識など、意識を持っていることの側面として扱われる様々な現象について、それらがヒト以外の動物においてどの程度あるのかを扱っている。特に本書の特徴の一つは、「知能や意識の進化について論じる科学者から無視されたり過小評価...

山川喜輝『理系なら知っておきたい生物の基本ノート [生化学・分子生物学編]』

理系なら知っておきたい生物の基本ノート [生化学・分子生物学編](2005/04/07)山川 喜輝商品詳細を見るとても楽しい読書。高校の生物の教科書から大学の生化学・分子生物学の授業への橋渡しをするように意図されている。高校教科書を超えて学問の楽しさを知りたい高校生、授業に着いていけなくなりそうな大学生、そして生化学・分子生物学そのものに興味がある一般人向け。ポイントを絞り、平易で親しみやすい文体でイラストを多く...

狩野恭一『免疫学の時代』

免疫学の時代―自己と外界の認識ネットワーク (中公新書)(1990/05)狩野 恭一商品詳細を見る免疫学の歴史やその概要を語ったもの。一般向きの新書レベルのものではあるが、あまり専門用語の解説などはないので少しレベルが高いかもしれない。19世紀の免疫学の成立から、液性免疫と細胞性免疫の基本的な仕組み、MHCと自己免疫、HIVなどのウィルスと免疫の抗争、臓器移植、誕生からの免疫系の成立と加齢によるその衰退、と話題が続く。...

猪飼篤『なっとくする生化学』

なっとくする生化学 (なっとくシリーズ)(2003/05/16)猪飼 篤商品詳細を見るこの本は最高に面白い。生化学の入門書で、主に大学初年生を相手に平易に語ったもの。生化学というと様々な分子や反応の羅列になってしまいがちなのだが、漫画タッチの絵を織り混ぜつつ面白く書かれている。これなら興味を持って読み進めていけるだろう。ミトコンドリアでのTCA回路によるATPの大量生産と、水素イオンの浸透圧・電位差を用いたADP/ATP変換...

ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』

ハチはなぜ大量死したのか(2009/01/27)ローワン・ジェイコブセン商品詳細を見る2006年を顕著な始まりとして以降、ミツバチの大量死が起こっている。単なる大量死ではなく、ミツバチたちが自分たちの巣を放棄してどこかへ行ってしまうのだ。大量死というよりは大量失踪である。この蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder;CCD)によって「二〇〇七年の春までに、実に北半球のミツバチの四分の一が失踪したのである。」(p.13)単な...

橘武彦『免疫学への招待』

免疫学への招待 (からだの科学選書)(1986/06)橘 武彦商品詳細を見る免疫学についての入門書。読み物ではなくて大学初年度向けの講義に基づく、しっかりした入門書。そのため記述はしっかりしており、まとまりもあって読みやすい。ただけっこう古い本なので、この変化の激しい分野では注意が必要だろう。ただ、分かってないところは明確にそう書いてある。また、とても残念なことに索引がない。これはかなりの欠点だ。記述の流れと...

佐藤矩行ほか『マクロ進化と全生物の系統分類』

マクロ進化と全生物の系統分類 (シリーズ進化学)(2004/12)佐藤 矩行馬渡 峻輔商品詳細を見る系統分類について解説した本。リンネ以来の類縁関係に基づく分類学が、DNA解析に基づく分子系統学によってどう変わったのか。どのようにして多様な生物を分類するのか。種概念の実在性のような概念的な話はそんなに書かれているわけではなく、個別のトピックに渡った議論が多い。ただし、分類と同定という根本的区別は示唆的で、分類とは...