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坂井豊貴『多数決を疑う』

名著。社会的選択理論について分かりやすく語った入門書。社会的選択理論は高度な数学に支えられている。本書は数学的ディテールに踏み込むことはない。しかしその雰囲気や、ここから先に踏み込んだら数学的に厳密な世界が待っている一歩手前まできちんと導いていく。タイトルにあるように、本書は多数決以外の不公平の無い決め方を巡っている。多数決は現代の社会で標準的なものとされる。多数決で示された結論が「民意」とされた...

岩村充『中央銀行が終わる日」

ビットコインを初めとする仮想通貨と、それが普及した際に通貨の管理者としての中央銀行はどのように役割が変わるのかというテーマを追っている。ビットコインと金融政策という、どちらもそれ自体でなかなか難しい話題。それに加えて、ありうる未来の話をしているため、どういう社会なのか想像力が求められる。ビットコインにまつわる暗号理論などの技術的なレベルは高くない。ただマクロ経済学の用語が多く、読み手にある程度のレ...

轟木一博『空港は誰が動かしているのか』

題名と内容はちょっと異なる。題名からは空港を日常的に運営する裏話のようなものを期待する。私もその想定で本を紐解いた。しかし内容はそうではない。この本は、2015年12月に締結された、伊丹空港・関西国際空港を統合した新関空会社のコンセッション(運営権)売却スキームを解説したものだ。日常的に空港がどのように運営されているのかについての話はない。著者は、伊丹空港・関西国際空港が(神戸空港を置き去りにして)新関...

トマ・ピケティ『21世紀の資本』

21世紀の資本言うまでもない名著。資本主義は自動的に経済格差を生み出す仕組みを内包している、というテーゼを歴史的に跡付けたもの。何よりもこの本が凄いのは、ろくな統計データもないような過去のデータをなんとかひねり出しているところ。本書ではそうしたところはすべてオンライン補遺にされている。実はこのデータの揃え方にかなり恣意が入っているだろう、というのは本書に向けられる典型的な批判の一つ。経済理論はいつも...

ハワード・マークス『投資で一番大切な20の教え』

投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識(2012/10/23)ハワード・マークス商品詳細を見るバリュー投資のファンドを運営する著者が、顧客向けレターなどで語ってきた投資哲学をまとめたもの。一般的にかなり評価の高い本なので手に取ってみたのだが、あまり面白くはなかった。著者は「私の狙いは、読者がこれまでに触れたためしのない投資に関するアイデアや思考方法を伝えることにある」(p.7)としているが、あま...

中谷秀樹『オープンスカイ時代の航空と情報システム』

オープンスカイ時代の航空と情報システム(2013/03)中谷 秀樹商品詳細を見る近年の航空業界の状況と、航空の情報システムについて。どうやら読者層としては航空業界を相手にする旅行代理店ではないかと思う。航空業界における情報システムを知ろうとしてIT業界の人間が読むと、どうももどかしい思いがする。とても多くのことが書かれているのだが、その分焦点がぼやけてしまっている。本自体が観光とはなにかという話題から始まり、...

レイ・フィスマン、ティム・サリバン『意外と会社は合理的』

意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム(2013/12/14)レイ・フィスマン、ティム・サリバン 他商品詳細を見る軽いタッチで読みやすく書かれた組織経済学の本。会社だけでなく軍隊や教会を含む、組織一般において一見不合理に見えるような現象を、組織経済学の視点から解明しようとしている。それらの不合理に見えるものは、利害や目標のトレードオフのなかでもっともマシなものなのである(p.12f)。組織経済学は経済学...

ナシーム・タレブ『ブラック・スワン[下]』

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質(2009/06/19)ナシーム・ニコラス・タレブ商品詳細を見る下巻も引き続き、ブラック・スワンとそれを見えなくしている人間の認知的仕組みや傾向について語る。下巻に割り当てられた後半部分はやや専門的な議論もあり、ベル・カーブを信じている金融業界や、新古典派経済学について辛辣な見解が続く(p.183-200)。というより、悪口と言ったほうがよいかもしれない。著者によればベル・カー...

ナシーム・タレブ『ブラック・スワン[上]』

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質(2009/06/19)ナシーム・ニコラス・タレブ商品詳細を見るブラック・スワン、通常の確率の考えからは漏れてしまうような事象についてのエッセイ。ブラック・スワンは次の三つによって特徴付けられている(p.4)。(1)その事象が起きるより前には予測不可能であること。(2)起こってしまった際には影響が重大であること。(3)その事象がなぜ起こったのか、事後に説明可能であること(その説明...

西川善文『ザ・ラストバンカー』

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録(2011/10/14)西川 善文商品詳細を見るSMBCの頭取および日本郵政の社長を勤めた西川善文氏の回顧録。巷で半澤直樹が話題になっていた時、融資課で不良債権と格闘し、上司との対立をも辞さないその姿勢を見ていたら、この人のことを思い出した。実際の半澤直樹のモデルはBTMUの将来の頭取候補と呼ばれる有力者らしいが。この回顧録はいつか読もうと思っていたので、ちょうどよいきっかけになった。...
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