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ジョージ・アカロフ、ロバート・シラー『不道徳な見えざる手』

ノーベル経済学賞受賞者たちによる一冊。内容は経済学における合理的人間像を行動経済学的のように疑うもの。実際の経済はみんなが合理的に自分の選好に従って判断しているわけではない。そこには人間の弱みや情報の非対称性に基づく、様々な仕掛けや騙しがある。著者たちの言いたいことは、こうした不道徳、不合理な経済の側面を取り上げて、経済に対する我々の見方を実際に近づけることだ。私たちの生きている自由市場には、表と...

柳川範之編『人工知能は日本経済を復活させるか』

冒頭の二人(松尾豊、石山洸)は人工知能についての論考。それ以外の4章は人工知能の話というよりは、無形資産の話。有形資産と違って無形資産は目に見えず扱いづらい。無形資産への投資がうまく行かなかったことが、日本経済の失われた20年の一因という論調。前二人の人工知能論は全体の文脈からは、どちらかというと浮いている。人工知能という言葉はすっかり流行っているが、その議論は玉石混交。松尾は、人工知能の議論が難...

山本拓・竹内明香『入門 計量経済学』

計量経済学のよい入門書。計量経済学はデータサイエンスからとても近いところにある、あるいはその一部とも言える。経済データを使って相関関係を分析する。中心的なツールは多変数線形回帰。基本的な手法だがその有効範囲は広い。機械学習の入門書とはまた違う趣の記述になるので、別の観点から同じ問題を見ているようで面白い。特に印象に残ったところは、残差が同じなのに決定係数が異なる例。非説明変数が異なる場合は、決定係...

坂井豊貴『多数決を疑う』

名著。社会的選択理論について分かりやすく語った入門書。社会的選択理論は高度な数学に支えられている。本書は数学的ディテールに踏み込むことはない。しかしその雰囲気や、ここから先に踏み込んだら数学的に厳密な世界が待っている一歩手前まできちんと導いていく。タイトルにあるように、本書は多数決以外の不公平の無い決め方を巡っている。多数決は現代の社会で標準的なものとされる。多数決で示された結論が「民意」とされた...

岩村充『中央銀行が終わる日」

ビットコインを初めとする仮想通貨と、それが普及した際に通貨の管理者としての中央銀行はどのように役割が変わるのかというテーマを追っている。ビットコインと金融政策という、どちらもそれ自体でなかなか難しい話題。それに加えて、ありうる未来の話をしているため、どういう社会なのか想像力が求められる。ビットコインにまつわる暗号理論などの技術的なレベルは高くない。ただマクロ経済学の用語が多く、読み手にある程度のレ...

轟木一博『空港は誰が動かしているのか』

題名と内容はちょっと異なる。題名からは空港を日常的に運営する裏話のようなものを期待する。私もその想定で本を紐解いた。しかし内容はそうではない。この本は、2015年12月に締結された、伊丹空港・関西国際空港を統合した新関空会社のコンセッション(運営権)売却スキームを解説したものだ。日常的に空港がどのように運営されているのかについての話はない。著者は、伊丹空港・関西国際空港が(神戸空港を置き去りにして)新関...

トマ・ピケティ『21世紀の資本』

21世紀の資本言うまでもない名著。資本主義は自動的に経済格差を生み出す仕組みを内包している、というテーゼを歴史的に跡付けたもの。何よりもこの本が凄いのは、ろくな統計データもないような過去のデータをなんとかひねり出しているところ。本書ではそうしたところはすべてオンライン補遺にされている。実はこのデータの揃え方にかなり恣意が入っているだろう、というのは本書に向けられる典型的な批判の一つ。経済理論はいつも...

中谷秀樹『オープンスカイ時代の航空と情報システム』

オープンスカイ時代の航空と情報システム(2013/03)中谷 秀樹商品詳細を見る近年の航空業界の状況と、航空の情報システムについて。どうやら読者層としては航空業界を相手にする旅行代理店ではないかと思う。航空業界における情報システムを知ろうとしてIT業界の人間が読むと、どうももどかしい思いがする。とても多くのことが書かれているのだが、その分焦点がぼやけてしまっている。本自体が観光とはなにかという話題から始まり、...

レイ・フィスマン、ティム・サリバン『意外と会社は合理的』

意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム(2013/12/14)レイ・フィスマン、ティム・サリバン 他商品詳細を見る軽いタッチで読みやすく書かれた組織経済学の本。会社だけでなく軍隊や教会を含む、組織一般において一見不合理に見えるような現象を、組織経済学の視点から解明しようとしている。それらの不合理に見えるものは、利害や目標のトレードオフのなかでもっともマシなものなのである(p.12f)。組織経済学は経済学...

ナシーム・タレブ『ブラック・スワン[下]』

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質(2009/06/19)ナシーム・ニコラス・タレブ商品詳細を見る下巻も引き続き、ブラック・スワンとそれを見えなくしている人間の認知的仕組みや傾向について語る。下巻に割り当てられた後半部分はやや専門的な議論もあり、ベル・カーブを信じている金融業界や、新古典派経済学について辛辣な見解が続く(p.183-200)。というより、悪口と言ったほうがよいかもしれない。著者によればベル・カー...

Appendix

プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。
しかし博士号は取らずPh.D. Candidateで進路変更。
哲学と特に関係なくIT業界に住んでいる。

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