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宮地ゆう『シリコンバレーで起きている本当のこと』

朝日新聞記者によるシリコンバレーのレポート。新聞に連載されていたもののまとめのようだ。そのためか、記述のレベルはかなり易しい。だが深いところには入り込んでいない。現地在住者のレポートであるが、ほとんど日本にいながらでも手に入る情報だ。現地メディアで話題になっていることをなぞった二次ジャーナリズムのように見える。独自の視点からの論点掘り起しは見られない。歴史や文化に踏み込むでもなく、技術に明るいでも...

古井貞熙『人と対話するコンピュータを創っています』

音声認識について極めて易しく語っている、非専門家向け入門書。この分野に興味を持ったなら最初に手に取る一冊だろう。こうした本がある分野はとてもよい。ただ、数式こそ頻出しないものの、各種の専門用語は多く扱われている。用語集としてまとめられているものの、読む人によってはきついかも。理論的なところを少し知っている私には、こうした平易な言葉で書かれると逆に分かりにくさを感じた。内容は、人間の言葉に関わる音声...

マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ『意識はいつ生まれるのか』

人の脳において意識とは何であって、それはどのように生まれるのかを扱った一冊。脳神経科学者の書いた本。専門的ではあるものの、とても分かりやすい記述。文章を書くのがうまい。文学的な表現から、ある問題が出てきた背景や歴史、多様な実験、比喩などを駆使して、この魅力的な謎に挑んでいる。本の構成もよくできている。散文的な章から入り、意識にまつわる謎を提示して、意識はあれでもないこれでもないと読者を謎に導く。中...

富永智津子『ザンジバルの笛』

ザンジバル島の歴史と文化について。現地の国立文書館で仕事もしていた著者による一冊。学術的な趣はあまりない。記述はしっかりしていながらも軽いタッチの記述になっている。歴史の部分は、オマーン帝国以前、オマーン帝国支配下、植民地時代に分かれている。オマーン帝国の支配下になる以前から、ザンジバル島はインド洋の季節風貿易で栄えている。ザンジバル島周辺に拡がるスワヒリ文化の起源は、シュングワヤとシラジにあると...

清水亮『よくわかる人工知能』

プログラマー、経営者として人工知能の分野で有名な著者が、人工知能研究の最前線にいる8名と対談したもの。内容は(用語解説はついているが)専門用語が多く、対談形式で読みやすいとはいえ決してレベルは低くない。人工知能のアルゴリズムについて詳細に語っているわけではなく、それで何ができるかに焦点があるので読むのは難しくない。ただ、そこで語られていることをきちんと理解するには、それなりの知識が読者にも求められ...

井原西鶴『新版 日本永代蔵 現代語訳付き』

1688年刊の、いまで言う自己啓発本か。江戸、大坂、京を中心として財を成したり没落したりした商人の姿を描いたエッセイ集。原文もとてもリズミカルで読みやすい。話の筋は、序説と本説のバランスが悪かったり、思わぬ脱線があったりしてうねっている。それは「西鶴の作品では、近代的なリアリズムとは大分かけ離れた筋道をとることが多く、しばしば説話的な展開をとってゆく」(p.299)のであって、近代的なエッセイの構造を読み込...

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ『哲学とは何か』

DGの哲学の魅力は、国家、資本主義、精神病といったすぐれて人間の精神活動に関わるとされてきたものを、唯物論的に、機械によって論じるところにあった。少なくとも私にはそうだ。本書ではDGが哲学とは何か、というこれまたすぐれて人間の精神活動に関わる問題について論じる。しかし本書では従来の唯物論的視点はあまり見られない気がする。また哲学は科学、芸術と対比され、3つ組として論じられるのだが、この図式がカントやヘ...

神嶌敏弘編『深層学習』

7名の著者によるディープラーニングの理論的解説。人工知能学会誌に載った連載なので、読者にそれなりのレベルを要求している。とはいえ新しい分野なので概念的には最初から書かれている。内容はもっとも原理的な理論面の解説があり、その後に画像認識、音声認識、自然言語認識への応用が書かれている。理論面は制限ボルツマンマシンに偏っているようにみえる。特にその一般論である指数型ハーモニウム族の話もきちんと扱われてい...

セバスチャン・ラシュカ『Python機械学習プログラミング』

素晴らしい一冊。Pythonを使った機械学習の初歩的なやり方が丁寧に書かれている。各アルゴリズムによるデータ分析のやり方のみならず、前処理やパラメーターチューニングも詳細に扱われている。最後にはTheano/Kerasを使った深層学習についても触れられている。反面、理論面の解説は薄いので、理論を理解していないとただPythonコードが動いただけで終わってしまうおそれもある。多少とも理論を学んで初級から中級へステップアップ...

ジャック・ウェルチ、ジョン・バーン『ジャック・ウェルチ わが経営 <下>』

下巻では投資会社やハネウェルを巡る買収の困難さと挫折、政府機関との関わり、グローバル化やインターネットの普及に伴うビジネスモデルの変革、シックスシグマ、そして次の会長選びについて。製造業をメインにしていたGEは金融に乗り出すが、多くの困難を伴う。特に、1986年に買収した投資会社キダー・ピーボディのケースは、本人も自分の慢心による失敗例として書いている。この投資会社の経営は、ボーナスに対する態度や会社へ...