Entries

八谷大岳、杉山将『強くなるロボティック・ゲームプレイヤーの作り方 プレミアムブックス版』

強化学習の入門書。強化学習は先ごろ良書が刊行されたが、それまではこの本くらいしかなかったようだ。2008年刊の再版なので内容は古め。それ以降に話題となったDQNなどのトピックはない。本文自体は140ページほどで終わり。その後はMatlib/Octaveのインストール方法と、本文で使用しているプログラムのコードが載っている。強化学習の基本的な概念を解説した後、価値関数の学習方法を離散空間、連続空間で解説。その後、政策を直...

東京大学教養学部統計学教室編『統計学入門』

誰もが読んでいる、通称赤本。基礎的な事項がうまくまとまっている。さすがは定評ある教科書。自分が読んだ中では、モーメントの話が面白かった。期待値、分散、歪度、尖度などの統計量がモーメントとして整理される。確率分布は(期待値まわりの)モーメントE(X-μ)^rで決まってくる(p.99-104)。モーメントが等しければ確率分布は等しい。中心極限定理もモーメントを使ってあっさりと証明されている(p.164f)。...

野口祐子『デジタル時代の著作権』

著作権という制度が、デジタル技術の進化によってどのような影響を受けているか。著作権法が抱えている根本的な問題は、100年以上前に決められた法律の枠組みでありながら、ベルヌ条約などの国際条約により変更せず維持するよう求められていることだ(p.16)。特にベルヌ条約の第27条第3項には、条約の骨子の改正は、加盟国164か国の全員一致でなければ変えられないという規定がある(p.89)。そもそも馬車の時代に作られた法律の枠組...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 II 意識篇』

意識について。引き続きこのシリーズは単純に認知哲学ではなく、神経科学との絡みのなかでの議論を基調としている。近年のこの分野の展開として、とてもあるべき姿だろう。話題はクオリアの性格という古典的問題から始まり、知覚経験の内容、知覚と思考の違い、意識の統一性、自我とは何か、意志とは何かを巡る6つの論文からなる。クオリアの性格を巡る議論は、レヴァインの説明ギャップの議論を扱う。それにより、いくつかの物理...

黒橋禎夫、柴田知秀『自然言語処理概論』

良書。200ページに満たない薄い本なれど、自然言語処理について大概のことが簡潔に書いてある。前半では形態素、構文、語の意味、文の意味、文脈の解析と徐々に範囲を拡大しつつ、それぞれの分野でどのような分析がなされているのか、代表的なところを書いている。後半ではニューラルネット、情報抽出、情報検索、トピックモデル、機械翻訳、対話システムといった話題を扱う。とても簡潔に書いてあるので、もちろんこれだけでは詳...

都筑卓司『なっとくする熱力学』

熱力学の副読本。とかく熱力学はつかみにくい分野だが、様々な例を挙げて理解を助けようとしている。熱にまつわる現象、物質の三相(固体・液体・気体)について、カルノー・サイクルなどが語られている。カルノー・サイクル以降は流体力学や量子力学などの話が絡んできて発展的であるとともに、話題がややバラバラであるとも見える。水という物質の異常性が何度か強調されていて興味を引く。水はもっともポピュラーな液体のように...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 I 認知篇』

認知についての哲学的論文集。5つの論文からなる。とても面白いことに、狭い意味での哲学には収まらない論考が多い。執筆者もいわゆる哲学の人間でなかったりする。フォーダーの概念原子論を中心とした、哲学における概念と認知科学におけるカテゴリー化の関わり。言語学や認知神経科学の視点を取り入れた、言語の認知への影響。行動経済学から見る、人間の思考の合理性。合理性に力点を置く、自己知と自己認知。ミラーニューロン...

サリム・イスマイル、マイケル・マローン『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』

「シンギュラリティ」の文字を見てひるんでしまったが、特にシンギュラリティの話は本書には無い。本書は、飛躍型企業と訳されている、指数関数的に成長する組織Exponential Organizationの特徴を明らかにしようとしたもの。飛躍型企業とは「加速度的に進化する技術に基づく新しい組織運営の方法を駆使し、競合他社と比べて非常に大きい(少なくとも10倍以上の)価値や影響を生み出せる企業」(p.18)と定義されている。従来にはなか...

矢野和男『データの見えざる手』

どうも評価が難しい一冊。日立の研究所で、ウェアラブルセンサを用いて様々な人の身体運動や、誰が誰と話したかのデータを取得して分析した結果。具体的には例えば、リストバンド型のウェアラブルセンサで腕の動きを50msごとに加速度センサで計測(p.23)。また、名刺型センサを首からぶら下げて、センサどうしの近接関係や空間にあるビーコンとの反応でその時点での位置を拾うなどしている。合計100万人日にも及ぶデータに基づいた...