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サラ・クーパー『会議でスマートに見せる100の方法』

皮肉の効いた、笑える一冊。会議でスマートに見せたり、主導権を握る手法について。イラストを中心にして面白おかしく書いている。当たり前の質問をして議論の流れを遮ってみたり、どうとでも取れる言葉(VisionとかStrategyとか)をホワイトボードに書いてみたり。実際にこれを実践している人がいたら、たしかにスマートに見えるかも。基本的には笑い話なのだが、こうした手法は本質をついているものでもある。要は大人しくしないこ...

アッシュ・マウリャ『Running Lean』

スタートアップの運営方法について書かれた一冊。製品のアイデア・プランの作成から、顧客インタビューによる課題の検証、ソリューションの検証、ローンチ、製品が市場にフィットしたの計測。かなり具体的であり、チェックポイントなども満載。特に、ビジネスプランにおいて確かめるべきポイントをひと目で書くリーンキャンバスはとても使える。このリーンキャンパスを基に、製品、顧客、市場のそれぞれの面でどんなリスクがあるの...

岡田英弘『中国文明の歴史』

中国史について書かれた概説書。簡潔な記述で、黄河文明からおおよそ日清戦争までを扱っている。著者の見立てでは中国文明は三期に分かれる。本書ではその前後を合わせて5期に区分している(p.24)。秦の始皇帝による統一までの中国以前の時代(~前221年)。隋の文帝による統一までの第一期(前221~後589)。元のフビライ・ハーンによる南宋の攻略、南北統一までの第二期(589~1276)。日清戦争での敗戦までの第三期(1276~1895)。そしてそ...

清水亮『はじめての深層学習プログラミング』

深層学習についての、プログラム言語をメインにした入門書。主にChainerを扱い、後半でTensorFlowも登場する。著者の会社で作っているライブラリDeelも出てくる。深層学習の仕組みについての話はあまりない。数式はほとんど出てこない。ChainerでのCNN、LSTMの実装例から、TensorFlowでのSeq2Seq、そしてDeep Q Learningを扱っている。最終章では深層学習の発展例として、スタイル転写、写真と説明文の生成、積層自己符号化器、転...

信原幸弘、太田紘史編『新・心の哲学 III 情動篇』

シリーズ第三巻は情動について。どちらかというと認知に偏りがちな心の哲学にあって、情動をメインに取り上げたのはとても面白い試み。本書で取り上げられているのは情動とは何か、という一般論だけではない。一般論を扱っている論文は一つだけ。後は、誘惑と自己制御、先延ばし、自己欺瞞、妄想といった具体的で身近な事例。情動によって判断が左右されるような事例が、どのように説明できるのかを巡っている。試みは果敢だが、い...

マーク・ジョンソン『ホワイトスペース戦略』

いまひとつ。企業がいま利益を得ている事業領域であるコアスペースから、どのように新規事業領域であるホワイトスペースに踏み出していくか。そのためにはビジネスモデルの変革が必要だ。ビジネスモデルという言葉は使い古された感もある。本書ではビジネスモデルがどのような要素からなるのかを定義。そしてホワイトスペースに乗り出すために、どの要素をどう変えればいいのかを書いている。ちなみにこのホワイトスペースはその企...

池尾恭一、井上哲浩『戦略的データマイニング』

ビジネススクールのデータ分析のケーススタディかな。アスクルのデータをマスキングしたものを使って、データ分析を行って顧客の購買行動を分析する。やっていることは重回帰分析、k平均法、アソシエーション分析。さほど高度ではない。なお、SPSSと一部Clementineによる分析結果。第3部が応用編とされているが、本論はここから。それまでの134ページは、アスクルのような企業が置かれている市場環境の分析と、ごく一般的なデータ...

岩波データサイエンス刊行委員会編『岩波データサイエンス Vol.3』

第三巻は統計的因果推論。変数間の相関関係は必ずしも因果関係を意味しない、というのは統計の鉄則。では逆に、どのような変数間の関係なら因果関係と呼べるのか。基本的には、それら変数に影響を与えるすべての変数(交絡要因)を考慮に入れた上で、それでも相関がみられるなら因果関係とするような感じだろうか。科学実験ならばランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)を行うような実験計画を立てて、因果関係を推...

小川さやか『都市を生きぬくための狡知』

アフリカ民俗学の博士論文が元になっている。しかし学術的な堅苦しさはあまりなく、極めて面白い。題材はタンザニア西部、ビクトリア湖に近いムワンザという都市における、零細商人たち。こうした零細商人は、現地スワヒリ語でマチンガと呼ばれている。語源は行商人(英語のmarching guy)から来ているようだ(p.3)。こうした人々は、経済基盤や商習慣の整った先進国からは想像もつかないほど異質な人々であることは、想像に難くな...

竹内淳『高校数学でわかるボルツマンの原理』

良書。エントロピーを巡って、熱力学と統計力学の両方の観点から解説している。単なる読み物ではなくて、数式はたくさん出てくる。ボルツマンの原理S=kblogWの導出に向けて、必要最低限の概念を説明している感じ。それゆえとてもすっきりした話になっている。熱力学のパートは類書と変わらない印象。エントロピーはカルノーサイクルにおいて保存される量として熱と温度から定義される(p.106f)。やはり熱力学の範囲では、定義してみ...