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古市貞一編『分子・細胞・シナプスからみる脳』

シリーズ脳科学5 分子・細胞・シナプスからみる脳 (シリーズ脳科学 5) (シリーズ脳科学)シリーズ脳科学5 分子・細胞・シナプスからみる脳 (シリーズ脳科学 5) (シリーズ脳科学)
(2008/05/22)
古市 貞一

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ニューロンとグリア細胞の構造、およびそれら神経細胞間のやりとりのメカニズムについて。専門への入門書の位置づけで、部外者には難しい。
しかしニューロンのK+チャネルの仕組みとか、長期増強の化学的メカニズムとかとても面白い。


amazonに読書記掲載。
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神経組織を構成する二種類の細胞、すなわち神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア)の構造についての概説書。それらの遺伝子発現の構造、細胞内外での化学物質の伝達構造について語られる。
グリアについても配慮がなされているのがよい。グリアは忘れられがちであり、本書の記述は有益である。しかし、基本的には話題はニューロン中心に行われる。

本書が扱う話題は、以下のようなものだ。ニューロンが遺伝子からどのように発現してくるのか。ニューロンは、どのように電位を変化させているのか。シナプスによって、どのように情報が伝達されているのか。また、ニューロンがシナプスを強化したり抑圧する仕組みはどのようなものか。
これらについて最新の成果を踏まえつつ、しっかりと解説されている。ただし一般向けの読み物ではない。生命科学に関する、学部生レベルの知識は必要である。


ニューロンが電位を変える仕組み、特にイオンチャネルの仕組みが面白かった。そして、電気シナプスと化学シナプスの話に興味を持った。海馬の一部のニューロンなどでは、ニューロン間が直接につながっている。この方が時間的な遅れもないし、情報伝達の確実性が高い。にもかかわらず、大部分のニューロン間ではシナプスを介して、イオンチャネルによって情報伝達が行われている。化学シナプスのほうが時間もかかり、伝達の確実性も低いのに、である。著者はその答えを、ニューロンの可塑性に求めている(p.66)。興味深い話である。


そのニューロンの可塑性という論点は、後半の大きなテーマである。主に、海馬と小脳のニューロンに関して、シナプスの長期増強・長期抑制について語られている。ある一定間隔の刺激を与え続けると、そのニューロンはシナプスを長期に渡って増強あるいは抑制するようになる。その化学的メカニズムについて解説がなされている。ニューロンの可塑性は、学習・記憶についての分子レベルの構造に関わるものであり、意義深い。


本書は脳細胞の生物学的構造について、信頼の置ける概説書である。一般書よりも踏み込んだ話題を求める人に、またこの分野への本格的な入門として役立つ、良書である。
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