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竹森俊平『経済論戦は甦る』

経済論戦は甦る経済論戦は甦る
(2002/10)
竹森 俊平

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評価の高い本だが、私にはいま一つだったかな。本書は不況に対する二つの見方を対峙するところから始まる。不況は害悪でしかないとするフィッシャーと、不況は創造的破壊をもたらすとするシュムペーター。この二人の見解を軸にして、1930年代不況の様々な動きを読み解く第一章はとても面白い。

第二章以降は小泉政権における構造改革とデフレ対策についての様々な論戦を巡る。第一章はフィッシャー対シュムペーターできれいに整理されている。だがこれ以降、この対立軸で様々な見解が整理されるわけではない。次々と見解が検討されていくが、軸が見えない。基本的には著者はフィッシャー側に立つ。創造的破壊の見解を批判し、リフレを主張する。

いくつも、さすがと思う論点はあった。メインバンクが信用調査の情報を押さえていた大製造業が、直接金融によってメインバンクを必要としなくなる。結果として非製造業と中小企業が銀行融資の主たる対象となる。レモン市場の解説を絡めたこの下りは、良くできている。また、優良銀行にこそ資本注入が必要であり、その際は経営は優良なのだから経営陣の責任を追及する必要はない、とする議論も説得性を感じた。不況期では逆選択が働き、資本増資は難しいのだ。

一方で、創造的破壊への批判はどうも納得されなかった。シュムペーター的な創造的破壊ではどうしようもないことは、1930年代の大恐慌の経験が示しているという。それが「標準」であると。だが、大恐慌からの脱出は、大規模な経済出動というケインズ的政策ではなく、第二次世界大戦の軍需特需だったという見解もある。私は後者に説得性を感じる。カバレロとハマーによる理論的議論はそれなりに説得性があるが。むしろバブル崩壊後に日銀があんなに異例な量的緩和をしても不況を脱出できなかったことが、いまリフレ派の旗色をかなり悪くしているのではないか。

経済論戦はよく分からない。対立する主張でも、どちらの主張もそれなりに根拠づけられていると感じてしまう。

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