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西原稔『ピアノの誕生』

ピアノの誕生―楽器の向こうに「近代」が見える (講談社選書メチエ)ピアノの誕生―楽器の向こうに「近代」が見える (講談社選書メチエ)
(1995/07)
西原 稔

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これは面白い。実に楽しい。ピアノという楽器がどう生まれ発展し、社会のなかでいかなる位置を占めていったのかを探る、音楽社会学の試み。単なるピアノ楽曲の移り変わりについてだけではない。ピアノという楽器の仕組み、手工業から大量生産への移行、大衆芸術の成立、ピアノ製造業者の浮沈まで。

イギリス・アクションとウィーン・アクションの違いも知らなかった私には、最初の方に書かれているモーツァルトとクレメンティの競演の再評価(p.17)からして蒙を啓かれた。イギリス・アクションにほぼ統一されてしまった現在。リストの「ラ・カンパネッラ」はイギリス・アクションでなければ不可能なこと(p.84)。モーツァルトはもとより、ウィーン・アクションの響きの下で作曲したシューマンやショパンについても、現代的にスタインウェイで弾いた時の響きとは違う、との指摘(p.42)も肯けるところだ。ま、ベーゼンドルファーとか残ってはいるのだが。

また、ベートーヴェンがエラールのピアノの技術革新とともに、ピアノの表現力を拡大していった過程も興味深い。ハンマークラヴィーアソナタの特異性もこの文脈に置かれればよく理解できる(p.54)。ピアノが金属フレームを採用する流れとなり、金属フレームの採用に抵抗したヨーロッパのメーカーが衰退し、アメリカのメーカーが勃興する過程はよく描かれている。

前半の楽器そのものの発展から、後半はピアノの社会学へと移る。産業の勃興によって生まれた富裕層にとって、ピアノが家庭にあることは上流階級のステータスとなった。ビーダーマイヤー調の家具の一つとして。そしてピアノは家庭の娘の嗜みとなる。ピアノ楽曲の方でも重厚で難解なソナタより、軽妙で分かりやすいワルツやノクターン、ファンタジーが好まれるようになる。こうして大衆化したピアノ音楽は、膨大な二流・三流の「消費財」を生み出していった(p.154)。

その後は音楽教師という職業の成立、自動ピアノの開発、そして日本のピアノ産業史へと話が続く。どれも非常に話題が豊富だし、引き込まれるような記述だ。一度読んだだけでは把握しきれないので、また読むことになるだろう。
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