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梅原猛訳注『歎異抄』

歎異抄 (講談社学術文庫)歎異抄 (講談社学術文庫)
(2000/09/08)
梅原 猛

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これは凄い。心底震えるような読書だった。言わずと知れた、浄土真宗の創始者の一人である親鸞の思想を、その弟子である唯円が記したもの。

人智を超えた阿弥陀仏の慈悲に対する、人間の有限性。人間ごときがちょっと努力したくらいで極楽に行ける(自力)わけがない。人智を超え、悪人すら救済するのが阿弥陀仏の慈悲である(他力)。だいたい、当人が善人であるか悪人であるかすら、前世の業なのだから(第十三条)。

そのような人間の有限性を省みれば、宗教理論などいらない。どんな権威にも与しない、鬼気迫る宗教心の持ち主がここにいる。それにはただ圧倒されるばかり。ただ念仏を唱え、阿弥陀仏に帰依すれば救われる。お布施や寺院の権威に屈することなど必要ない。そもそも、念仏すら実は本人が唱えるというよりは、阿弥陀仏が唱えさせるものだ(第八条)。親鸞はそう語るが、それを信じるかどうかは人の好きにすればいいとまで言ってのける(第二条)。何の権威も正統性も求めない、純粋な心持ち。

たしかに、ここに「日本において初めて超越的な神が出現したのではないか」(p.263)という梅原の指摘は衝撃的な推定だが、的を射ていると感じた。人間の有限性に対する徹底した思索。純粋な宗教心以外の、特に宗教組織や儀式を拒否する頑なな態度。たしかに後年の浄土教を支えた蓮如がこの本を封印したわけもあろう。実にとんでもない、恐ろしい本だ。
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