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大前研一『考える技術』

考える技術 (講談社文庫)考える技術 (講談社文庫)
(2009/03/13)
大前 研一

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事実をベースにして論理的に考えること。既存の思考の枠組みを無批判に受け入れるのではなくて、その正当性を自分で問うこと。そのことが様々な事例を通して語られる。かなりの説得力があるし、エピソードや考え方を読んでいるだけでも楽しい。

事実に基づいた論理的な結論は誰にでも受け入れられる、「事実を突きつけられれば相手は抵抗のしようがない」(p.62f)という雰囲気が全面的に漂う。著者はかなり意図的にこのスタンスを取っている。もちろん「人間の感情はロジックだけでは収まらない」(p.64)。論理的な結論を実行するには、根回しやら何やら必要だ。しかし「外部のコンサルタントに「実行」はできない。それはあくまで社長以下企業側のやることだ」(p.64)。

別に疑問を投げかけているつもりはない。ちなみに疑問を感じたのは次のくだり。
ニュートン力学や線形思考では、原因が同じなら結果も同じになるが、複雑系の世界ではそうはいかない。線形思考とは、方程式に当てはめれば必ず正解が得られるという直線的な思考方法だ。一方、非線形または複雑系の世界では、初期条件がほんのちょっとでも違えば結果は予測不可能になる。(p.166)

非線形力学でも初期条件が同じなら結果は同じなのでは。二つの初期条件の小さな差と、それらの結果の差が非線形になっているだけで。

以下は自由連想。どうして人々はかくも論理的に考えられないのか、と嘆く著者だが、その原因はなんだろう。「そのベースには、同質の人たちが好まれる社会風土のようなものがあるように思う」(p.140)と書かれているが、この一文は「ようなもの」「思う」ととても弱気。この原因についての事実に基づいた論理的思考はないのだろうか。思うに、ちょっと前までの日本は、日本国内で取引相手が見つかった。しかも多様性が少ない。つまり、取引相手についての別の選択肢が少ない。だから、一回一回の取引の相手は次の取引の相手とならざるをえない場合が多い。この場合、事実に基づいた論理的思考は不利になる。それは次のゲームで相手の裏切り戦略を呼ぶ。どこかでお互いの事情に基づいた、妥協を含む選択を行うことが反復ゲームで有効な戦略だ。つまり、論理的でない選択をすることが実に論理的であるケースがあるのではないか。
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