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相良亨『日本人の心』

日本人の心 (UP選書 (233))日本人の心 (UP選書 (233))
(1984/12)
相良 亨

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これは実に実に素晴らしい本だ。日本人の心の特質と一般に考えられるものについて考察する。つまり、和の尊重、武士道精神、誠実性の追求、秩序への態度、持続することの価値評価、あきらめ、死生観、自然観。これらを『古事記』から明治以前の文献に至るまで縦横無尽に引いて、探求していく。
特に興味を持ったのは、以下のような箇所。冒頭の西行の「情」についての話。丸山の荻生徂徠評価に対して、伊藤仁斎を表裏の裏として擁護すること。また、竹取物語から「あきらめ」を読解するあたり。

もちろん、ここで古代から脈々と語られる「日本人」がいったい何なのか、問われなければならない。また、このような日本人の特質の探求から漏れた思想家たちの声も。


amazonに読書記掲載。またNGワードに引っかかった。なんと「絶版になり」の箇所だった。「絶版」がNGワード??なんだかな。
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本書はタイトル通り、「日本人の心」を扱う。日本人の精神性の特徴をいくつか挙げていく。そしてその特徴を、古代から明治以前までの文献に探っていく。自分の感じ方や考え方にも多少なりとも見られる特徴が、文献において明らかにされる。自分が漠然と感じていたことが、昔の人によって明確に意識されていたのだ。読み進むうちにそれが明らかになり、大きな驚きを覚える。

本書が扱う日本人の心の特徴とは、次のようなものだ。章ごとに掲げる。まず、情・縁・慈悲という言葉に見られる、「和を尊ぶ」特徴。次に、本音と建て前、名と恥といった武士道精神。誠実性を重んじる、純粋性。情とはしばしば対立する、道理・秩序・政治/社会制度の捉え方。古き良きものを重んじること、現在まで持続していることへの価値評価。あきらめ、変わり身の早さ、覚悟。天・大地へ還るものとしての死生観。「自ずから然りあるもの」としての自然観。

個人的に特に感じ入った点を三つ挙げる。
まず冒頭、西行について。西行は出家し、世を捨てる。人との関係を断つ。しかし西行は、同行者を求める。これは手を携えたり、向かい合ったりする同行者ではない。背中合わせに座り、お互い顔も合わさないような同行者である。この西行の態度は奇妙だ。だがここから、これが変化した形で本居宣長の「物のあはれ」論へ進む展開が面白い。西行は一つの極端な事例として出されているわけだ。
次に、第三章での荻生徂徠、伊藤仁斎の扱い。丸山真男以来、荻生徂徠は日本の近代化を準備したとして高く評価される。逆に伊藤仁斎は徂徠によって批判され、乗り越えられたものとして評価が低い。しかし著者はこの理解に挑戦する。曰く、理の追求を説いた徂徠は、為政者に向かって説いたのである。万人に説いたのではない。徂徠によれば、「民は愚か」である。明治以降でも、民衆はむしろ仁斎の説く誠のモラルのなかに生きていた。そして徂徠的な発想を持つ官僚、指導者、産業家などの制度機構を、仁斎的な発想を持つ民衆が承認し、支えていったのだ。こうして、著者は徂徠と仁斎を物事の表と裏として配置する。興味深い読解である。
最後に、『竹取物語』からあきらめを析出する過程。月に帰るかぐや姫は、誰にも止められない。この世の最高の権力を持った帝によっても、である。月は老いも悲しみもない世界である。この世は老い、死、穢れを持つ。しかしかぐや姫はこの世の「あはれ」を知る。帝はかぐや姫の残した不老不死の薬を富士山にて焼いてしまう。かぐや姫の「あはれ」を受け、月への、かぐや姫への思いを「あきらめる」。この世に生きる自らの身を引き受け、「あきらめ」によって心の安定を図るのだ。

以上、本書は漠然と考えがちな日本人の心の特徴について、考えるヒントを多様に提供する。脈々と流れる思想の水脈に驚くばかりである。本書が絶版となり、忘れられ、図書館の書庫で眠っているのは非常に残念なばかりだ。復刊され、広く読まれ、考えられることを望んで止まない。

しかし、注意しなければならないこともある。それは、本書が言う「日本人」がいったい誰なのかである。古代から近代に至るまで、脈々とその特徴を受け継いできたこの「日本人」とはいったい何なのか。本書に挙げられなかった文献たちの意味は。日本思想における、異なる声への配慮が必要である。そして、また明治以降の「日本人」についても。
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