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クリシュナ・パレプ、ビクター・バーナード、ポール・ヒーリー『企業分析入門』

企業分析入門企業分析入門
(1999/03)
クリシュナ・G. パレプポール・M. ヒーリー

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MBAで教科書としてよく使われる一冊。証券アナリスト、財務アナリストの基本的知識を網羅している。財務諸表の読解はもとより、将来キャッシュフローと企業価値の予測、それらを用いた企業における債権構造、M&A、財務政策、IRと話は続く。全般的にCompaqの財務諸表に基づいて開設されているが、資料編としてAOL、Gap、Home Depoといった企業の分析もなされている。

概念がきちんと整理され、実例に基づいて重厚に詳説されているところはまさにアメリカの教科書といったところ。一度読んで全部が理解できるわけではないが、この記述の濃厚さは読んでいて快適だし、信頼がおける。

特に印象に残ったポイント。割引超過利益、割引超過ROEに基づく企業価値の推定と、割引キャッシュフローを用いた企業価値の推定は理論上、同じ結果になる(p.168)。これはまったく違う概念による企業価値の推定が同じ結果に至ることで、一見して不思議な結果である。たしかにこの二つの分析方法によるターミナル・バリューはまったく異なる。後者では予測期間より先の期待キャッシュフローはすべてその現在価値がターミナル・バリューになるが、前者ではこのターミナル・バリューは正常利益の現在価値と超過利益の現在価値になる。そして正常利益の現在価値は、現時点の株主資本の簿価に含まれるか、もしくはその成長分に含まれるために、最終的にこの二歳は一致することになる(p.187)。

もし市場が効率的で株価が利用可能な情報をすでにすべて反映しているなら、ミスプライスされた証券を探すことなどの証券分析を行う必要はどこにもない。すべての投資家がこのような態度を取るならば、証券分析はなされなくなる。したがって裁定も行われることはなくなり、ミスプライスは放置され、市場は効率的でなくなる。「均衡では、ちょうど証券分析に資源を投資するインセンティブが与えられるのに十分なミスプライスが生じていなければならない」(p.209)。これは市場は効率的でない、という命題の背理法による証明。市場が効率的なら裁定は行われない。したがってずれは放置され、市場は効率的でなくなる。したがって矛盾。ゆえに、市場は効率的ではない。

企業の業績予測を専門の証券アナリストがどんなに頑張って予測しても、それは単純なランダム・ウォークによる予測(今年度の利益を前年度と同じと予想すること)と大差ないというのは意外だった。とはいえ、証券アナリストによる業績予測は、ランダム・ウォークによる予測より平均で22%程度の改善となっている。「年度の早い時期に、ランダム・ウォークによるベンチマークから大きくかけ離れたところで今年度の利益が予測されることは通常ないのである。」(p.103)
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