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橘武彦『免疫学への招待』

免疫学への招待 (からだの科学選書)免疫学への招待 (からだの科学選書)
(1986/06)
橘 武彦

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免疫学についての入門書。読み物ではなくて大学初年度向けの講義に基づく、しっかりした入門書。そのため記述はしっかりしており、まとまりもあって読みやすい。ただけっこう古い本なので、この変化の激しい分野では注意が必要だろう。ただ、分かってないところは明確にそう書いてある。また、とても残念なことに索引がない。これはかなりの欠点だ。

記述の流れとしては、免疫学史から始まり、抗原とは何か、抗体・免疫グロブリンの構造、抗体とB細胞、補体、T細胞、抗体産出応答としてのT細胞とB細胞の相互作用とひと通りの免疫構造を概説。その後、免疫系によって引き起こされる症例を取り上げて実際の動き方を示す。I型からIV型までのアレルギー、自己免疫と自己免疫疾患(SLE)、移植免疫、ガン免疫と概説。そして最後に免疫学における様々な実験方法・検出方法、免疫学の今後についてを述べて終わる。

特によく解説されていると感じた点をいくつか挙げる。
まず、抗体の多様性を生み出す構造について。抗体の多様性はVドメインのVH,VLの僅かな部分(超可変部)にある。VLで3箇所(アミノ酸約25個)、VHで4箇所(約30個)。「この超可変部の構造のちがいがVドメインの基本構造にはほとんど影響を与えないように設計されている点は見事である」(p.53)。
さらに、異なる遺伝子からIgが合成されてくる過程について、しっかりした解説(p.82ff)。特に、「一つの遺伝子が一つのポリペプチド鎖の構造を決める」という一遺伝子=一酵素説に合わないものとして、最初に現れたのが免疫グロブリンという話は面白い。L鎖のV領域とC領域は別個の遺伝子によって作られる。(p.67f)
また、補体についてもしっかり解説されている。C3を中心にしてC5bからC9までの反応が起こり、細胞膜に対して穴をあけていく過程も興味深い(p.118ff)。

後は印象的なところを羅列しておく。

抗原に対して抗体が産出されると、その抗体に対する抗抗体ができる。するとその抗抗体に対して抗抗抗体ができる。このようなネットワークが免疫の調節に関わっている。(p.66f)

T細胞はマクロファージなど標的細胞上の抗原を、「自己標識」(MHC遺伝子の産物)と一緒に認識する。自分の細胞の提示する抗原しか認めない(MHC拘束)。(p.153)

免疫系を構成するB細胞、T細胞など様々な細胞は、あらかじめ定まったそれぞれの機能を発揮して一つの作業をしている。これは交響楽団にたとえて免疫学的交響楽団、「免響」といわれたことがある。(p.158)

Rh-の母親がRh+の子供を出産するとき、胎盤性出血により子供の血液が母親の体内に入り、抗Rh抗体が作られる。この抗体はIgG抗体で、Rh+の第二子を妊娠すると、胎盤を通じてこの抗体が胎児の体内に入って胎児性赤芽球症を引き起こし、死亡する。これを防止するには第一子出産の直後に抗Rh抗体を母親に注射して、Rh+の赤血球を破壊し、抗体の産出を阻止する。(p.195f)
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