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高橋伸夫『経営の再生 [新版]』

経営の再生[新版]―戦略の時代・組織の時代経営の再生[新版]―戦略の時代・組織の時代
(2003/04)
高橋 伸夫

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とてもしっかりしたいい本だ。学問としての経営学を追求している。個々の議論への分析は精緻だし、理論的にも筋が通っているので読みやすい。かといって実際の経営から離れた話でもなく、経営についての考え方がどう変遷してきたのか、どう実践されてきたかにも注意が払われている。

何よりも信頼が置けたのが冷静な分析。まず最初の方には、事業の多角化についての日米比較を分析しているが、ここでは企業の事業をどう分類するかの議論から詳細に行われて少し驚いた(p.24ff)。逆に、多国籍企業における文化の違いを国際比較した、ホフステッドの結果への批判(p.164-175)はかなり細かくて、ポイントはどこにあるのだろうと分からなくなってしまった。

中でもPPMへの冷静な評価(p.64ff,78-90)はとても読みがいがある。PPMは航空機産業での基礎研究で得られた学習曲線についての考え方を、基礎研究を離れて、学習曲線の信頼性をことさら強調して売り込んだもの(p.80f)であり、基本的には資産管理の手法である。PPMにおける市場成長率、相対市場シェアはもともと資金流出、資金流入の代理変数であるから、事業における資金の流出入を管理するものである。これは資産管理であって、経営ではない、と著者は評する(p.69)。「無理をせずに、PPMは持株会社の子会社管理つまり資産管理に用いられたものだと考えたほうが自然ではないだろうか。」(p.68)PPMへの熱狂のなかで見失われた、経験曲線の「迷信」を否定する基礎研究の成果を紹介するあたり(p.84-90)は、「経営学」の面目躍如だろうか。

さて本書を貫くテーマはもちろん、経営とは何か、である。著者は章を追ってそれが「何で無いか」を検討し、「何であるか」に至る。PPMへの評価は「経営は投資ではない」ということであるし、経営者革命、経営と所有の分離の議論は「経営は所有ではない」という文脈にある。さらに、ファヨールとバーナードの組織論から言われるのは、「経営は組織の管理administrationでもない」ということである(p.205ff,217f)。これはちょっと意外だったが、組織を管理するには組織がすでに成立・存続していることが前提となるからだ。しかし、組織を成立・存続させること自体が非常に難しいことである。ここでの組織とは単なる人の集まりではなく、活性化された組織であり、「組織のメンバーが、(1)相互に意思を伝達し合いながら、(2)組織と共有している目的・価値を、(3)能動的に実現していこうとする状態」(p.219)である。こうした組織を成立・存続させることこそ、経営することへの一歩である。(p.219f)

こうして著者は、組織論へ至る。「経営の再生を説くことは、組織論の再発見を説くことを意味している」(p.259)。著者は経営を、戦略を明確に示すことにより、組織のランダムな行動を秩序・方向付け、組織を活性化することに見ている(p.254f,295)。

だがこの最後の組織論の話は、いま一つピンと来ない議論だった。第8章は基本的に、様々な組織論を著者の観点から整理したものだ。特にそのなかで出てくる、組織という概念と企業という概念の対比が目を引いた。組織がシステムの概念であるのに対し、企業は境界の概念である。企業、会社とは構成員や出資者とその外部に境界を引き、複雑・多様な外部環境から事業や内部組織を隔離する役割を担っているのだ、と著者は書く(p.275-290)。ルーマン的な自己準拠システムの捉え方だ。しかし、著者は、組織とは企業をもまたぐものだとしている(p.287)。「複数の企業が一つの組織として機能しているという光景は、いまやまったく当たり前の光景なのである」(p.289)。経営が組織の成立・存続に関わるものだとすると、これは複数の企業にもまたがるものだ。ところが我々が通常、経営と呼ぶのは何よりも、企業の経営なのである。経営者とはある企業の経営を成す者のことだ。この二つの観点はどう関わるのだろうか。


だが本文のどの箇所よりも印象に残ったのは、前書きに書かれている次の文章だった。
 一生とは言わない、たとえ数年でも、損得勘定ぬきで夢中になれる仕事と巡り会えることは、同様の異性と巡り会えることと同じくらい幸せなことである。
 選択するのはあなたである。(p.ii)
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