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小泉文夫『音楽の根源にあるもの』

音楽の根源にあるもの (平凡社ライブラリー)音楽の根源にあるもの (平凡社ライブラリー)
(1994/06)
小泉 文夫

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音楽民族学、音楽社会学に含まれる著作。軽い文章からきちんとした論文、そして対談まで多様なものが含まれている。著者は研究の途中から日本の伝統音楽の研究に転じ、また世界の未開民族を含む様々な民族音楽を収拾。その広い視野から様々に語られている。

世界中の多様な音楽について、実地を調査したときのエピソードなどが読めるのが面白い。その他にも、東洋の楽器の特徴としてサワリ(「三味線や琵琶のような弦楽器で、弾いた弦が振動して、棹の一部に触れる現象で、このためしびれるような雑音が発せられる。」(p.22))を挙げたり、労働歌は実際の労働に合わせてとても歌えるものではなく、むしろ労働と労働の間の休憩で歌われたものだ(p.44-49,74)とか面白いコメントが散見される。

特に印象に残ったのは、民族音楽の比較において。日本の民族音楽は、第一拍目から入り、第一拍目に長音を持ってきて、その後に細かな音価、そしてまた長音で終わるという対称的なフレーズの構造を持っている。ところがドイツ民謡ではむしろ弱起が多く、一拍目よりも前に弱拍の準備がなされて緊張がそこで高揚している。インド音楽を見ればより違いは激しく、第一拍に至るまでに拍を細かく刻み、一拍目で解放される。「さくらさくら」をインドの学生に譜割りさせると、「さくらさくら」の「ら」が一拍目と考える。(p.52-61,131)

基本的に1970年代の著作なのでやや古めかしい感じも覚える。その民族がもつ音楽と社会の構造の関係(p.195)などは、慎重に述べられてはいるのだが、それでもサピア・ウォーフ仮説のような危うさを感じる。現在の日本の音楽状況、また音楽教育の状況についての苦言や愚痴はあまり読んでいて好ましい想いを抱くものではない。
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