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岩田規久男『金融入門』

金融入門 (岩波新書)金融入門 (岩波新書)
(1993/10/20)
岩田 規久男

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金融の基本的な仕組みについての概説。貨幣とは何か、金融機関はどんな行為を行っているのか、金融機関が存在することにどんな意味があるのか。自由化や国際化などのやや歴史的な話もある。古い本なのでいま現在から見ると補強の必要な記述もたくさんあるが、基本はそうそう変わるものではない。

学問的な調子で書かれているので、記述はだいぶ硬い。もう少し柔らかく書いてもいいと思うのだが。基本を解説した本なので著者の主張などが強く出た本ではない。4つのポイントをメモした。

戦後ドルが国際通貨になったのは、アメリカの圧倒的な経済力によりドルの価値が安定していた時代が長かったことに加え、アメリカには発達した政府短期証券市場が存在するため。この証券市場において、ドルを短期的に安全・確実に運用して利子収入を得ることができる。こうした政府短期証券市場は日本にはない。(p.11f)

直接金融を行うには実績が必要。発展途上国では企業が実績を示せるような歴史がまだない。それゆえ相対取引が多い。経済が発展するにつれ、銀行からの借入は減少し、債券や株式市場が発展する。直接金融の増加は経済の発展である。(p.86f)

日本の金融自由化(ビックバン)が始まった要因が4つある。(1)国債の大量発行。大量の国債によって形成されたマーケットで、証券会社は債券の現先売りを行った。定期預金の規制金利は債券現先レートよりも低かったので、大企業などの大口の銀行定期預金は債券現先売りに流れた。これに対抗して、銀行が大蔵省に求めたのが譲渡性定期預金(CD)だった(1979年認可)。(2)日本企業の海外における事業債・CPの発行。日本の銀行は海外では債券の引受業務を行っていたため、ノウハウを蓄積した銀行が証券との分離規制の撤廃を求めた。(3)アメリカの外圧。外国の銀行が日本で大量の支店を展開して預金を集めるのは難しいため、高い金利で集めようとする。ここに金利規制が障害となっていた。(4)高齢化社会における年金の運用。投資信託業務への進出のチャンスが増え、銀行は規制の緩和を求めた。(p.146-149)

BIS規制(バーゼル合意)の問題点。(1)銀行が保有する株式の含み益の45%を算入できる。このため、株価の変動でBIS規制をクリアしたりできなかったりになる。(2)BIS規制をクリアできると銀行の倒産リスクが低下するために、規制をクリアした銀行は逆にリスクの高い資産を保有することができ、リスク志向が高まる。(3)自己資本比率8%の規制の場合、銀行は自己資本の12.5倍の資産しか持てない。株価が下落して自己資本比率を満たすことが危うくなったとき、取りうる手段は自己資本の拡大か資本全体の縮小だが、株価が下落しているときに増資などは不可能であるから、結局運用資産を減らすことになる。つまり、株式市場が低迷すると銀行の貸出が減る。(p.168f)

最後の点はバーゼル1についてなので、その問題がいまどう評価されるかは調べてみないと。
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