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内田和成『仮説思考』

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
(2006/03/31)
内田 和成

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多くの気づきを与えてくれるよい本だ。著者がここで仮説思考と読んでいるのは、不十分なデータの下でもとりあえず仮説を立ててみる、という手法だ。演繹的思考や帰納的思考を行うには、それなりのデータが集まっている必要がある。だが、あてどもない情報収集に基づく思考(「網羅思考」と著者は呼ぶ)は効率が悪い。時間の限られた中ではこうしたやり方はうまくいかない。確かに著者が言うように、こうした思考は実は頭のよい人が陥りがちなものだ(p.38f)。

別にこの仮説思考はコンサルに限ったことではない。この思考法にはabductionという名前が付いている(ただしこの本にはabductionの名は出てこない)。自分のいる仕事環境だとトラブル対応でのバグ分析がこれに当たる。少ない時間と情報のなかで原因を突き止めるには、まさにabductionが必要だ。仮説を立て、その仮説を検証するものは何かを考え、実行結果を分析すること。これが苦手な人はけっこう多い。

さてabductionの論理は演繹deductionや帰納inductionに対して解明されているとは程遠い。形式的論理体系としても、そんなに確固たるものができている印象もない(非単調論理の一環で研究されているようだ。例えばDenecker&Kakas, "Abduction in Logic Programming"とか)。むしろ、学者の発見法として捉えられているものが名高い。ポアンカレ『科学と方法』アダマール『数学における発明の心理』ポリア『いかにして問題をとくか』など。

この本でabductionの論理についてはどうしているのだろうと言うと、おなじみのKKD、すなわち勘・経験・度胸となっている。いい仮説を立てられるのは「経験に裏打ちされた直感力、勘によるもの」(p.33)であるし、「すべては経験なのだ」(p.217)。そして「より少ない情報でたしかな答えを出していく度胸」(p.232)の問題となる。

とはいえ、ある程度の仮説の組み方、仮説にたどり着くための方法は記されている。(1)反対側から見る、(2)両極端に考える、(3)ゼロベースで考えるという3つの方法(p.126ff)はよく書けているし、参考になる。また、実験・ディスカッション・データ分析の3つの仮説検証方法も参考になるし、日常生活の中で仮説思考を訓練する方法(p.194ff)はいい経験の積み方として重要だ。

自分はこういう考え方が一番好きだが、あまり活かせる環境にいないのが不満なところ。
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