Entries

伊藤洋『財務コーチング』

財務コーチング―最少のエネルギーで財務の要諦を押さえる85のポイント (アクション・ラーニング・シリーズ)財務コーチング―最少のエネルギーで財務の要諦を押さえる85のポイント (アクション・ラーニング・シリーズ)
(2003/11)
伊藤 洋

商品詳細を見る


本の題名がやや堅いので、財務会計の入門書とは見られないかも知れない。だが、財務会計の本としてまず一番に推したいような本で、とてもうまく書かれている。経営資源の最小の投資で最大の利益を産み出そうとするのが企業活動だが、本書はその活動を財務諸表の基本的な理解を通して浮かび上がらせようとする。この本自体が最小の投資(読書時間)で最大の利益(財務会計の基本的理解)を得ようとするもので、その目的は果たされていると言っていい。図や表も多く理解しやすく、さらに練習問題もついている。

財務会計と税務会計のズレについて貸倒損失を例に説明する箇所(p.46-49)などが気に入った。PLの法人税等調整額とBSの繰延税金資産・負債の関わりなどがよく分かる。また、減価償却費をCF、PL、BSの3つの視点から見るという話(p.86)も印象に残った。CFの視点からは減価償却費とは投資資金の回収であり、PLにとっては資産購入費を資産が使える期間に渡って分配すること、BSにとっては年月の経過によって資産の価値が減じていることを表す。

一番気に入ったのはDCF法での企業価値算定の導入。ここではまずワンルームマンションに投資すべきかという話から始まっている(p.135f)。一年ごとに家賃収入を得た後、何年か経ったあとでの売却というシナリオでのマンションの現在価値を考える。この話がそのままDCF法の解説になっている(p.144)。つまり一年ごとの家賃収入が単年のフリーキャッシュフローであり、数年後の売却がターミナルバリュー。マンションの現在価値の算出方法がそのまま現在の企業価値の算出方法となっていて、とてもうまい説明だと感じた。確かにこの二つはやっていることが同じである。

企業経営にとって財務会計とは何かというテーマの基本を扱った本書は、王道の内容を扱っている。奇を衒ったり変に阿ったりするところのない丁寧な記述に安心して読む進められる。貴重な一冊。
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://exphenomenologist.blog100.fc2.com/tb.php/402-03cfcbfb

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する