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狩野恭一『免疫学の時代』

免疫学の時代―自己と外界の認識ネットワーク (中公新書)免疫学の時代―自己と外界の認識ネットワーク (中公新書)
(1990/05)
狩野 恭一

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免疫学の歴史やその概要を語ったもの。一般向きの新書レベルのものではあるが、あまり専門用語の解説などはないので少しレベルが高いかもしれない。19世紀の免疫学の成立から、液性免疫と細胞性免疫の基本的な仕組み、MHCと自己免疫、HIVなどのウィルスと免疫の抗争、臓器移植、誕生からの免疫系の成立と加齢によるその衰退、と話題が続く。

免疫学が発展してきた過程での実験や、学会の論争の趨勢などがたまに書かれているのが楽しい。例えば1970年代初めに発見されたインターロイキン(本文中ではインターリューキン)は、その後100種類以上のあまりに多くの種類が提起された。こうした研究の混乱を経て、1970年代終わりに状況は統一され、いまではインターロイキンはIL1~IL6までとインターフェロン(IFN-γ)の7つとなっている。(p.87ff)

こうした学問内だけでない事項としては、1970年のサイクロスポリンの発見が書かれている。ヘルパーT細胞やCTL(細胞毒T細胞)の活動を選択的に抑えるサイクロスポリンA(CYA)は、臓器移植を大きく発展させた。臓器移植は1950/1960年代に行われて以降、その成功率の低さもあって一時発展が止まっていた。臓器移植が広く行われるようになったのには、CYAの発見が大きく寄与している。(p.140-146)

他には、すべての免疫反応におけるマクロファージの寄与の大きさが注記されている。抗体を産出できない動物や、リンパ球を欠く動物でもある期間生存できるが、マクロファージなしに生存し得た地上の脊椎動物はいまだに観察されていない(p.23f)。とはいえ、本書には抗原提示について少し書かれているくらいで、あまりマクロファージについての記述はない。またモノクローナル抗体は、抗体を産出する脾細胞をマエローマ細胞と融合させて作ること、つまり、脾細胞をガン化させたものである、ということが目を引いた(p.73-76)。

一番面白かったのは、HLAの非常な多様性とその進化論的意義についてだった。人間のHLAは極めて多様であり、3000万以上のパターンがある(p.136)。ここまでHLAが多様性を持つ意味は基本的には謎だが、胎児の胎盤形成に重要であることが書かれている。受精卵の着床は胎児のトロフォブラストの侵入に対する母親側の脱落膜の反応と増殖によってなされる。両者のHLAを始めとする同種抗原の違いが大きければ大きいほど、この反応は激しくなり十分なサイズと重さを持った胎盤が形成される(p.149ff)。

正常妊娠のためには夫と妻のHLA不適合が前提条件の一つである。すなわち免疫的に胎児に有利な反応の場である”特別な環境”づくりに、HLA不適合が必要とされる。このためには、どの夫と妻の組合せでも不適合になるほどの極端に高度なポリモルフィズムが要求される。おそらく長い進化のプロセスで種の保存という基本的な要求に応ずるために、HLAのポリモルフィズムが形成されたにちがいない。(p.158f)


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