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今谷明『室町の王権』

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)
(1990/07)
今谷 明

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室町幕府の第三代将軍、足利義満の野望を描いた本。その野望とは天皇に取って代わることであり、この野望は「その規模・スケールの大きさといい、計画の周到さといい、他の例に類を見ない底の事件」(p.156)である。このような野望を抱き、実現の直前まで行った人物は足利義満しかいない。他の武家政権(北条氏であれ徳川氏であれ)は、実質的に政治は武士が行なっているにもかかわらず天皇(や公家)を立てた(p.36)。武家政権以外だと例えば藤原氏などが頭に浮かぶが、それも一族から天皇を出すなどして権力を握ったものであり、あくまで天皇制度・律令制的官位制度のなかである。それそのものを崩そうとした人物はいなかった。

本書は十数年をかけて徐々に天皇・上皇の権力を奪っていく足利義満の過程を描いている。全体の鍵になるのは、足利義満自身、順徳天皇の子孫であること。また、当時の後円融天皇と同年・いとこであり、ライバル関係であったこと(p.37f)。確実に権力を拡大していく義満に対して後円融天皇は孤立し、自殺未遂事件まで起こす(p.48f)。その後円融天皇の死後、官職任命権を義満は受け継ぎ、まずは天皇・上皇の権力を奪う(p.62)。

天皇を上回る司祭権を得るがため出家する(p.77)。征夷大将軍のみならず太政大臣すら辞官する(1394/1395年)のは、そうした官職を持っていては所詮は天皇制度・律令制的官僚制度のなかにしかいないからだ(p.112,116)。一時期、義満は祈祷に没頭するが、これは天皇との対抗のためであって政治に関心を失ったからではない(p.95f)。そもそも義満に信仰などなく、すべてが権力闘争のためなのである(p.86f)。天皇とは別の権威立てのため、国王を名乗り明へ朝貢し明の家臣と称する(p.120)。祭祀、遣明船に際して、自らを印象づける義満は、イベントにおいて自分を誇示するのが実にうまい(p.137)。

そしてついに最終的には嫡妻の康子を後小松天皇の准母とすることにより、自らが准父となる(p.164f)。この後、自らの男子である足利義嗣を天皇に立てて完全に天皇制度を支配しようとする(p.170f)が、病に倒れ道半ばにして義満は死去する。

この後、斯波氏をはじめ守護たちの巻き返しにより、徐々に天皇に権力と権威が戻っていく。これは尊皇思想などではなく、将軍とは別の権威で家職制を支える自己保身であった(p.180f)。幕府側も綸旨を連発し、ことあるごとに天皇の権威にすがるようになっていった(p.200)。

著者言うところ、足利義満以外に天皇に取って代わる可能性があったのは徳川家光くらいである(p.218)。しかし幕府が江戸にあり、西国の支配が弱かったこと(これは鎌倉幕府にも言える、p.6f)、何よりも対キリスト教のため、日本としての権威・アイデンティティを必要としたことから不可能であった(p.214f)。

本書は二つの説に反対するように書かれている。(1)網野善彦の強調する、天皇制度の存続と非農業民の関わり。著者によれば天皇制度は何よりも政治的事柄であり、政治のせめぎあいのなかで残ってきたものだ。(2)天皇は祭祀権力として残ってきたという説。著者見るところ、世俗権力がないのに、盛大な宗教的権威をもって祭祀が行えるはずがない。天皇家が経済力を失った時に祭祀儀礼も消滅している(p.23-31, 217)。

義満の王権簒奪行為とは、通説でいわれているような封建王政樹立への動きではなく、むしろヨーロッパの近世に近い”絶対王政”を志向した運動ではなかったか[...]。義満にいま数年の寿命があれば、状勢はまったく一変したかも知れないが、結局は機未だ熟さず、絶対王政を阻止しようとする有力守護の連合の前に、未遂に終わったのであった。(p.196)

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