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内山登紀夫、水野薫、吉田友子編『高機能自閉症・アスペルガー症候群入門』

高機能自閉症・アスペルガー症候群入門―正しい理解と対応のために高機能自閉症・アスペルガー症候群入門―正しい理解と対応のために
(2002/03)
内山 登紀夫、 他

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アスペルガー症候群について。その特徴付け、診察および治療の現状、そのような子供の扱い方など。自閉症スペクトラムの考え方に立っているので、本書では高機能自閉症とアスペルガー症候群は同義に用いられている。狭義の自閉症(カナー型自閉症)からより高機能のものまでに自閉症は渡ると考えられている。

自閉症スペクトラムは次の三ツ組の要素に対する程度として捉えられる(p.13-24)。(1)社会性の障害。これはどのレベルの他社との社会性(同年代か、身近な大人か、まったくの他人か)によってもレベルが分かれ、またその対応によって(a)孤立型、(b)受身型、(c)積極・奇異型に分けられている。(2)コミュニケーションの障害。表現が定型的過ぎたり、言語理解・非言語理解に問題があったりする。(3)想像力の障害。いわゆる「他人の心」の読解に関するものや、同じものの繰り返しに固執していて少しでも変化があるとパニックを起こす、など。

さらにはアスペルガー症候群に付随しやすいいくつかの症状として、AD/HDやトゥレット障害、学習障害が挙げられている。また、医学的心理学的治療方法として薬物療法や行動療法と並んでTEACCHメソッドが取り上げられている。TEACCHメソッドについての記述はそれなりに量がある(p.54-60)が体系的ではなく、事例の紹介になっていてTEACCHメソッドが何であるのかについては他書に譲られているのがやや残念。これら治療に関する記述が薄いのは以下の認識によるのだろう。「現代の医学や心理学、教育学では、自閉症を「治す」ことはできません。たとえ高機能であっても、それは同じことです。私達はこの眼前んたる事実を受けとめるところからまず出発しなければなりません。」(p.45)

本書の後半は学校や家庭においてアスペルガー症候群の子どもたちをいかに扱うか、に焦点がある。実際の小学校の教諭などが執筆している。アスペルガー症候群の疑いをいかにして発見するか、どう対処するか。執筆者の立場もあって、全般的には小学校くらいの子どもを記述の対象にしているようだ。事例の中には高校生も出てくるが、基本的には未成年に対する記述である。前半の自閉症スペクトラムに関する話が年齢に依存しないような記述であることに比べると、成年後の人々に対する視点が失われているように感じる。

他には、本人にアスペルガー症候群を告知するという選択肢についての考察(p.61-74)が目を引いた。自覚をもたせることによって改善できることもあるし、それが医学的なラベルを貼ってしまうことによって問題をもたらす可能性もある。また、自閉症は「心の理論」の障害であるというよくある通説への批判も目を引く(p.119-128)。特に高機能自閉症に関して言えば、心の理論の障害を検知しようとするテストにおいて高得点を取れる事例もたくさんある。「自閉症の子どもが他者の心の状態を把握する仕方は、健常の子どものほとんど無意識で直観的なとらえ方とは大きく異なり、意識的で努力を要する論理的な情報処理プロセスのようなのです。しかも他者の心の状態について彼らが努力して下す判断が、通常では考えられない不適切なものである場合も多いのです。」(p.124)したがって、系統的な学習や経験の蓄積によってある程度パターン化して他者の心の状態を読むことができるようになっても、新たな状況では常に困難を伴いつづけることになる。

個人的にはもっと医学・物理学的な話が読みたいのだが、そうした本はあまり無いようだ。自閉症スペクトラムを生む脳の生理学的構造はほとんど明らかになっていないし、したがってそれに対する薬物を始めとする治療やその機序のメカニズムもあまり明らかではない。多少探しては見たが、看護系、しかも子どもの事例の書籍が主のようだ。
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