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坂井栄八郎『ドイツ史10講』

ドイツ史10講 (岩波新書)ドイツ史10講 (岩波新書)
(2003/02/20)
坂井 栄八郎

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ローマ時代から東西ドイツ統一までのドイツ史を、10章に分けて記述したもの。大学の講義ノートが基となっているようで、すんなりと読んでいける。時代時代の事柄だけでなく、その背景や当時の人たちの捉え方書がかれているので興味をひかれる。

例えば、フランク帝国における教会の役割。フランク帝国は496年頃にクローヴィスがアタナシウス派キリスト教の洗礼を受けることによりキリスト教徒の結びつきが始まる。このフランク帝国がランゴバルドとドイツの諸侯を従属させ、800年のカール大帝が神聖ローマ帝国の初代皇帝となる。神聖ローマ帝国といっても首都は定まっていないし、ローマ帝国と違って官僚機構もない。そこで統治機構として利用されたのがキリスト教組織だった。利用したどころか、当時の人々の意識からすれば国家=教会であった(p.19-22)。面白い視点は、教会の聖職者は結婚しないから、血縁関係を構成しない。一方で、地方の諸侯は基本的に世襲となることが多く、地縁とともに権力を構成してしまい、やがて帝国への脅威となるかもしれない。聖職者はそうした意味でも帝国にとって使いやすい存在だった(p.31f)。

時代背景への目配せとしては、ルターの改革運動がなぜ素早く広まっていったのかについて、カール5世がスペインの反乱やイタリア戦争でドイツに不在、ドイツを任されていた弟フェルディナンドもオスマントルコ軍との戦いでルターどころではなかったことなど。アウクスブルクの和議(1555)での領邦教会制度がドイツを国家分裂に導くことになった(p.81-88)。そしてそれに続く30年戦争(1618-1648)によりドイツは大きな損害を被った。絶対主義と重商主義は評判が悪いが、この2つを単なる悪者ではなく三十年戦争からドイツが復興するための国家による強力な指導と統制だったと評価している(p.99f)。

ワイマル共和国からナチスの台頭までの複雑な過程もよく書けている。ワイマル憲法は当時もっとも民主的な憲法だが、だからよいわけではない。人々は急な変化を受け入れられず、混乱の元となった(p.173f)。この混乱のなかでワイマル共和国を支えたのがドイツ官僚制である。ギムナジウムで育成された、国を支える優秀な官僚制の重要性と、改革に抵抗する官僚の保守性が書かれている(p.157f,173f,183f)。自らの分野にこもってしまい、大局を見ることのないドイツエリートへのオルテガの指摘を引いている(p.206)。

ドイツ史の本としてバランスよくまとまっている良書。
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