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トーマス・レドマン『戦略的データマネジメント』

戦略的データマネジメント 企業利益は真のデータ価値にあり (Harvard Business School Press) (ハーバード・ビジネス・セレクション)戦略的データマネジメント 企業利益は真のデータ価値にあり (Harvard Business School Press) (ハーバード・ビジネス・セレクション)
(2010/02/18)
トーマス・C・レドマン

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企業内データを競争優位を生む源泉と位置づけ、それをどのように管理していけばよいのかポイントを示して論じた本。企業内データの管理についてはよくまとまっている。様々なところでポイントがいくつかにまとめて書かれていて、それぞれチェックリスト的に使うことができるだろう。

企業にとってデータ、情報、コンテンツはその活動の本質に属する。すべての企業はデータや情報を内外に発信して活動している(p.169)。企業の活動とは情報をどこかから仕入れ、様々な加工を経て自らの情報を発信する。それは製品という形であれ、サービスという形であれそうである。著者は、ポーターのvalue chainの考えを援用して企業内の情報を「情報連鎖information chain」として捉えている。ところが「ある意味で、今日の企業組織の構造は情報時代にはそぐわない」(p.220)。なぜなら、職能別組織を典型としてデータの流れにそって組織構造はできていないからだ。

本書のポイントはデータ管理をIT部門から移し、企業全体の課題として考えることにある。企業内のデータは様々な部門が利用するものであり、困難であろうとも標準化されなければならない(p.223ff)。データの一元管理ができていないとデータの品質が悪化する。データの品質が悪いことにより、典型的に7つの課題が生まれる。これはよくあるものだ(p.52ff)。(1)必要なデータが見つけられない、(2)データが不正確、(3)データ定義が不十分、(4)プライバシー・セキュリティが不十分、(5)複数のデータ間で整合していない、(6)データが過剰・冗長、かくして(7)企業レベルの混乱が生まれる。

こうした状況から改善したデータ資産管理とは次の3つの活動からなると語られている(p.4-7)。(1)データを資産として認識し、他の資源(財務資源や人的資源)と同様に管理すること。特に人的資源のように考え、データを「育てる」(品質を向上させる)という視点は面白い。(2)データの企業独自の取り扱い方を見つけること。データの利用は企業の競争優位を生むものであり、独自の創造的視点が要求される。(3)管理されないデータは害をなすことを認識すること。利用しても消滅しないというデータ資産の特性に目を向け、情報漏洩を注意すること。

これらの活動を行うために、データ資産管理へのマネジメント層からの全社的コミットメント、データが何に使われるのかという視点から考えるデータ定義などデータ改善の10のポイントが語られ(p.67ff)、また企業内で全般的にデータを利用するために乗り越えるべき12の壁(p.209f)などが述べられている。

価値を生むものとしてのデータ資産と、その全社的・戦略的管理を説いた本としてはよく書けている。出てくる例もポイントが絞られていて適切である。
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