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西川善文『ザ・ラストバンカー』

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録
(2011/10/14)
西川 善文

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SMBCの頭取および日本郵政の社長を勤めた西川善文氏の回顧録。巷で半澤直樹が話題になっていた時、融資課で不良債権と格闘し、上司との対立をも辞さないその姿勢を見ていたら、この人のことを思い出した。実際の半澤直樹のモデルはBTMUの将来の頭取候補と呼ばれる有力者らしいが。この回顧録はいつか読もうと思っていたので、ちょうどよいきっかけになった。

構成は前半が頭取に至る以前、安宅産業やイトマン事件の処理をめぐる融資課での格闘を描いている。後半が頭取に就任して以来、さくら銀行との合併によるSMBCの誕生、ゴールドマン・サックスによる出資の話、そして日本郵政社長に就任し政治に翻弄される過程を描いている。特に最後の日本郵政社長の時、様々な政治家に妨害を受ける場面は、もちろん当事者の一面からの記述とはいえ暗澹たるものだ(p.272-298)。

何よりも強く印象に残ったのは、事実と論理に基づいて明確な結論を持ち、それを支えにリスクを取っていく姿勢(p.45)。磯田一郎元住友銀行頭取の「向こう傷を恐れるな」という言葉も、この姿勢に解し、何をやってもいいという意味ではないとしている(p.102)。また、現場を重視して現場の情報を集めようとする態度も印象に残る(p.93f)。そうした態度は安宅産業の処理において伊藤忠商事と対決する場面での、伊藤忠商事の各事業の査定に対して対抗していく場面(p.76ff)や、イトマン事件は長女への溺愛が磯田頭取の判断を狂わせたものであり、銀行の恥(p.130)とまで言い切る場面に見られる(p.120f)。

他に少し意外に思ったのは、磯田頭取時代のマッキンゼーによる経営戦略の立案と大きな組織変更(p.103f)、A.T.カーニーによる住友銀行時代(2度)、日本郵政時代のリストラ(p.168f, 240)などコンサルファームの名前が出てくることだった。それから、GSからの出資話の鍵になったのがポールソンとの個人的つながり(p.174, 181)であったり、わかしお銀行の法人格を残す逆さ合併によってイギリスでの業務が危うくなったのをロイド・ジョージとのつながりで乗り越えるなど(p.183)、海外人脈についても印象に残った。

読む人の観点によって違うが、個人的には頭取へと上り詰める過程がもっと知りたかった。課長時代、部長時代にいかに仕事をして何が評価されて役員、常務、頭取と進んでいったのか。分量としてはそうした話題は少なく、もっと読みたいと思った次第だった。
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