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エリヤフ・ゴールドラット『チェンジ・ザ・ルール!』

チェンジ・ザ・ルール!チェンジ・ザ・ルール!
(2002/10/11)
エリヤフ・ゴールドラット

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Theory of Constraints(TOC)の観点からITシステム、特にERPを眺めたもの。ちょうどERPの導入が流行したトレンドを受けて書かれたものだろうか。システム屋はERPを入れることによる運用上のメリットを語りたがる。いわく、情報がリアルタイムに見られるようになる、意志決定のスピードが早まる、全社的に統一されたデータから多様な分析ができる、など。しかし、それらERPシステムの導入がいったいどういう利益をもたらすのかについては、明確なものはものはあまり聞かれない。会社の究極的な存在目的は利益を上げることだとするゴールドラットの立場からすれば、語られるものはERPシステムの導入によって利益にいくらの貢献があるか、ということになろう。具体的な数字で示すことが重要だ(p.115)。確かにこの観点は経営者目線からすれば当然の発想でよく聞かれる重要なものだし、しかも難しい。

もう一つのメイントピックになっているのは、ERPシステムの導入が部分最適に終わってしまう傾向だ。ERPシステムというテクノロジーを導入しただけでは意味が無い。原題の通り、テクノロジーの導入は『必要であるが十分ではない』。テクノロジーがそれまでの制約事項、限界を解決したなら、そうした限界を前提としている運用ルールも変えなければならない(p.175, 298)。例えば情報がリアルタイムに得られるようになったのならば、意志決定のスピードも早めなければならない。生産スピードが上がったのなら、在庫の適正水準も変更しなければならないし、販売計画を見直すサイクルも変えなければならない(p.250)。ERPシステムの導入は業務の変更を伴うものであり、単なるシステム導入に終わってはならないという話もよく聞く。アドオンを入れて既存の運用ルールを堅持するのではなくて、運用ルールのほうが変わるのが理想だ。

TOCとERPは考えが逆だというポイント(p.135)も目に止まった。TOCではボトルネックを探しだして、そのボトルネックのリソースに合わせるように他のステップを調整する。これは全体のリソースを俯瞰的に見て、各ステップに割り当てていくERPのアルゴリズムに反するものだ。TOCは非常に常識的なものに聞こえるが、既存のルールを変更するには教育が大いに必要なのだ(p.286)。

と以上にポイントを洗ってみたが、残念ながらあまり内容のない本に感じた。この本の話は、既存のERPでは企業業績が改善しないところに、TOCの観点から「ドラム・バッファー・ローブ」と「バッファー・マネジメント」を入れてうまく行ったという話なのだが、その二つの内容についてほとんど何も書かれていない。TOCとERPの関係についても生煮えの感が強い。この人の本はいくつか読んだが、TOCを最初に解説した本のインパクトが強いせいか、後の本はどうもパッとしない印象だ。
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