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河本薫『会社を変える分析の力』

会社を変える分析の力 (講談社現代新書)会社を変える分析の力 (講談社現代新書)
(2013/07/18)
河本 薫

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ビッグデータの流行に伴って、データサイエンティストという役割が大きく注目されている。日本でデータサイエンティスト関連の話題が出るときに、真っ先に名前が挙がってくるのがこの著者だ。かくして、本書はデータサイエンティストとしての第一人者が満を持して著したものだと言えるだろう。

とはいえ、新書という形であることも一因だろうが、内容があまり深くない。本書の伝えるメッセージとしては、前書きに記されたもので尽きている。つまり、データ分析は問題を解明する意図を持ってなければただの数字遊びであるというものだ(p.17,137)。データサイエンティストの観点から書かれており、データサイエンティストかくあるべしという論が語られている。類書だとそうしたデータ分析の結果を活用するための企業戦略とか、そうした分析を活かしやすい企業風土、ビッグデータ関連の技術やデータマーケット、あるいは法整備の問題などについて語られるだろうが、本書にそうした話題はない。

知的欲求を満たすこととビジネスに役立つことは違う。データ分析はビジネスに使えなければただの数字遊びであり、無価値だと著者は記す(p.28-33)。ビッグデータが流行となり、データ分析から魔法のように販売戦略が出てくるかのように謳われたりもする。著者にもそうした期待が多く寄せられているのだろうが、実務者の観点からそうした過大な期待を諌め、実際にできることは何かを述べようとしている。分析力だけではビジネスを変えられない(p.64f)。必要なのは分析力によりビジネスを変革しようとするマインドである(p.26,66)。これはデータ分析を提供する側も、提供される側にも言えることだ。データ分析を提供するデータサイエンティストは、データ分析の際には、それがどう意思決定に役立つのか、どういう分析問題なのかを始める前に考えることが必要である(p.139-141)。なぜなら意思決定者が欲しいのは正しいデータでなく、正しい意思決定なのであり(p.111)、意思決定の役に立たないのならデータ分析はただの数字遊びに過ぎない。

ビジネスにどう役立てるのか、意思決定にどう資するのかを考慮せずにデータ分析をしてしまうのは、それだけ今ではデータ分析が気軽であるからでもある。データは様々なものが揃っているし、分析モデルも多様。なにより、コンピュータの性能が大幅に向上している。昔は分析に時間がかかったので、とりあえずやってみようという態度は許されなかったから、いきおい何のための分析なのかが問われた(p.153f)。

かくして著者は理想のデータサイエンティスト像として、ビジネスを知る人と分析を知る人の融合を説く。データ分析を行う人と、それがビジネス・意思決定にどう資するのかを考える人が一緒になっていて、データ分析という営みのミッション全体を見渡せる人が必要だと説く。これはサッカーの比喩を借りて、フォワード型分析者と表現されている(p.78-82)(その割にはこの対語はディフェンダー型ではなくバックオフィス型であるが)。いわば、ビジネスの前線にも出ていき、そこで何が起こっているか理解できる分析者のことだ。つまり、解く力、見つける力、使わせる力の三位一体を備えている人物である(p.116)。データ分析の問題を解くだけではなく、ビジネスへの応用の見つける力を持ち、さらには営業部門をはじめとする現場を動かし、データ分析の結果を使わせる力を持つ。

このフォワード型分析者の例として出てくるものが面白い(p.102ff)。アンケート結果に基づいて宅配ピザのマーケティング分析をして、その分析結果として小学校高学年の子どもを持つ家庭が宅配ピザの注文の可能性が高いと出たとする。だが、宅配ピザの会員情報に子どもの年齢の情報がなければ、このデータ分析結果は役に立たない。解いても意思決定に資することのない問題の例となっている。データ分析において乗り越えるべきものはこれだけではもちろん無い。著者は四つの壁としてうまくまとめている。それはデータの壁、分析の壁、KKDの壁、費用対効果の壁となっている。壁を越えられる見込みがないのなら、そもそもデータ分析は止めておけ、というのが著者のアドバイスだ(p.92-95)。

流行に乗るのではない冷静な目を持っているのも好ましい。ビッグデータに踊らされることわけではなく、むしろ企業がいま持っているリトルデータの分析が貴重な価値を生むと述べている(p.58-62)。またデータだけでなく、KKDもそれなりに有効であるから謙虚であれ(p.156-159)。そもそも、データ分析は連続性の世界(タレブの言う「月並みの国」)でしか成立しないものであるから、分析が外れである想像力を持つ必要がある(p.124f)、など。
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