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田中一之編『ゲーデルと20世紀の論理学 (2)完全性定理とモデル理論』

ゲーデルと20世紀の論理学(ロジック)〈2〉完全性定理とモデル理論ゲーデルと20世紀の論理学(ロジック)〈2〉完全性定理とモデル理論
(2006/10)
田中 一之

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シリーズの第二巻だが、これは良質な教科書だ。本書は三部に分かれている。一階述語論理の完全性定理を扱った第一部。モデル論の初歩を扱った第二部。そして、主に内包的文脈に関する言語哲学を扱った第三部からなる。

第三部はゲーデルの背景となる論理学史が少し触れられているが、主眼はそこではない。内包的文脈の論理的扱いを巡った学説紹介。ゲーデルの完全性定理とはあまり関係ない。筆致もこの著者のいつもの調子。以前のような極端な無味乾燥は和らいでいるが。

第一部、第二部はかなりよくできた教科書だ。どちらもすっきり書かれているし、初学者向けに証明も詳しく書いてある。練習問題が(第一部は特に)無いのが教科書的ではない。特に第二部は驚異的。モデル論についてはそもそも日本語の本もほとんどないのだが、この第二部はクリアだ。とても面白かった。短いとはいえ、ultraproduct, back-forth argument, saturated model, omitted typesとモデル論がじっくり味わえるポイントが押さえられている。とても楽しく読めた。


amazonに読書記掲載。
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ゲーデルについてのシリーズの第二巻。ゲーデルの完全性証明(1930)を巡る三つの論文から成る。そのうち、第一部と第二部は初等論理学についての素晴らしい入門である。議論の展開がうまく、トピックが見通しのよいように選ばれている。またなにより、証明がかなり詳細に書かれており、初学者向けである。第三部はモデル論史はあるが、主眼は内包的文脈を表現する構文論を巡るもの。完全性定理との関連は薄い。そこで、前二者についてのみ記す。この本(第一部・第二部)を貫く主張は「完全性定理の証明の鍵は、コンパクト性定理である」というもの。このコンパクト性定理を巡って、完全性定理を経た構文論的な証明(第一部)、ウルトラプロダクトによるモデル論的証明(第二部)が扱われる。ちなみに、位相空間での証明にもわずかに触れられている。

まず第一部は、一階述語論理についての解説である。この解説の特徴は、タブローからモデルを構築すること、述語論理を命題論理の拡張と見ること、である。まず始めに、ケーニッヒの補題について詳しく解説される。ケーニッヒの補題は論理学の議論では頻出するもので、これがまず始めにきちんと書かれているのはとても好ましい。以降は、タブローを用いながら、命題論理と述語論理が解説される。述語論理の完全性証明は、命題論理のそれに量化に関するものを追加したものとして証明される。タブローを用いること、述語論理を命題論理に関連づけること、というこの2点は実はR.Smullyan, "First-order logic"の論じ方である。だが、スマリアンの本より議論の見通しはずっとよい。第一部はこの後、シーケント計算LKを導入してクレイグの補間定理などを論じて、等号記号と関数記号の扱いに触れる。最後に、スコーレム標準形とエルブランの定理について触れている。

ついで第二部は、モデル理論への入門である。これは実に素晴らしい。モデル理論について書かれた解説書は、日本語ではかなり少ない。そのなかでも、この第二部のように証明まできちんと書かれているものは他にはない。第二部はとても貴重であり、また読んでいてとても面白い。基本的な事項を確認した後、ウルトラプロダクトが導入される。そしてウルトラプロダクトを用いてコンパクト性定理の証明がなされる。コンパクト性定理を用いてレーベンハイム・スコーレムの定理、飽和性(saturatedness)等を扱った後、量化記号の消去を論じる。これはモデル理論のハイライトの一つ。実閉体の完全性証明が扱われる。その後は範疇性の議論。ここは、まず証明の見通しを立ててから、それぞれの道具立てを導入してレンマを証明していく。とても素晴らしい議論の仕方だ。この過程で排除タイプ(omitted type)、安定性(stability)、極小性(minimality)などといった、モデル論の重要概念が紹介されていく。ただし、議論のレベルは配慮され、初等的に押さえられている。モデル論では様々な代数的構造や集合論的な無限が頻出する。モデル論だけ読んでもなかなか分からない世界である。だが、この第二部はそういう他分野の知識をそんなに必要としないように書かれている。

以上、本書は一階述語論理とモデル論についての素晴らしい入門的解説を含んでいる。シリーズの一冊であるため、これが良質の教科書であることは気付かれにくいだろう。コンパクト性定理について、ウルトラプロダクトを用いた証明が平易に読めるのが特に嬉しい。完全性定理を経た証明は、証明の有限性に訴えるもので、個人的にはやや肩透かしの印象を受けるからだ(とはいえ、ウルトラフィルターの存在もツォルンの本題を経由するから、結局は選択公理にまつわる問題に巻き込まれるわけだが)。

最後に少し補足しておく。第一部は見通しがよいが、述語論理を命題論理に関連づけているので、述語論理そのものの構造がうかがえるわけではない。ヘンキン定項の意義やタームモデルを構成していることは分かりにくい。また、LKはタブロー経由で導入されるので、シーケントの式集合はmultisetでなくset。構造規則がない。カット除去もタブロー経由で、実際の手続きや証明探索はない。LK自体の面白さは見えない(もちろん、本書のコンセプトからすれば当然)。また、第二部は素晴らしいが、量化記号の消去の議論が薄い。実閉体の量化記号の消去をやろうとすると証明はかなり長大になるが、それでももう少し内容を書いてほしかった。また、興味をもった読者のために挙げられているモデル論の本がChang&KeislerとHodgesの大きい本となっている。Hodges, "Shorter Model Theory"かBell&Slomson, "Models and Ultraproducts"あたりを挙げておけばより親切だろう。
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