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Scott Bernard, "An Introduction to Enterprise Architecture: Third Edition"

An Introduction to Enterprise Architecture: Third EditionAn Introduction to Enterprise Architecture: Third Edition
(2012/08/10)
Scott A. Bernard

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エンタープライズ・アーキテクチャの入門書。この分野はあまり参考になる日本語の書籍がないため、英語の文献を読んだ方が早い。日本だとEAはとりあえずザックマンフレームワークで、BA、AA、DA、TAの四つのレイヤーに分解してAs-Is/To-Be分析する、という話をよく見る。この本は基本的な発想は同じだが、レイヤーの分け方は違う。EAに関する様々な本は、ほぼこのレイヤーの分け方にポイントがある。本書に書かれているフレームワークはこんなもの(クリックで拡大)。
ea3.png


これはEA^3(EA cube)フレームワークと呼ばれている。それはストラテジー、ビジネス、テクノロジーの3つのレイヤーに分かれている。この3つのレイヤーは詳しくは5つの層に分かれる。事業の目的と方向性を表すGoals&Initiatives、事業の内容を表すProducts&Services、事業において扱われているデータや情報を表すData&Information、事業を支えるために使われているソフトウェア資源を表すSystems&Application、そしてハードウェア資源を表すNetworks&Infrastructureの5つ。ストラテジーのレイヤーがG&I、ビジネスのレイヤーがP&SとD&I、テクノロジーがS&AとN&Iとなるだろう。

これら5層全体にかかわるセキュリティ、スタンダード、スキルが挙げられている。セキュリティはオペレーション、データ、人、物にかかわる4つの観点から語れる。スタンダードは組織が採用する様々な資源の基準、スキルは組織に属する人々のスキルを表している。そして各事業(Line of Business)が取られている。

こうして三次元で区切られた各セルに対して、情報を文書化して明らかにし、それをEA Repositoryで一元管理しようというのが本書の言うEAとなる。そしてこれらのAs-Is、To-Beとその間の移行計画を作成することになる。こうして組織の戦略に主導される組織の全体像が得られることによって、無駄なIT投資(全体像が明らかでなければどこかで二重投資しているかもしれない)を避け、組織全体に渡る基準に基づく適正な投資の判断が行われることになるだろう。

本書はEA^3のセルのそれぞれについて実際にどういった文書を作成すればいいのかを具体的に詳細に記している。それはその手の話を知っている人にはおなじみのものだ。本書はそれらの概要をそれぞれ説明しようとするので、知っている人ならばそこは読み飛ばせばよい。ストラテジーであればSWOT分析やバランスト・スコアカードが登場し、ビジネスではIDEF-0やUML、テクノロジーでは同じくUMLやネットワークトポロジー図、はたまた固定資産のリスト。スキルに至っては単なる組織図が含まれていたりする。

全体的に平易に書かれているし、EAが何であるかについて入門書としてよくできている。自分の興味はここから先。それにしてもEAは巨大すぎないか。局所的に導入することはEAの観点からはあまり意味をなさない。個別最適でなく全体最適がEAの基本発想。もちろんビジネスのプロセス、データ、情報をすべてUML等で記すことができれば、不要なプロセスやまだIT化されていないプロセスが発見されるだろう。けれどもそれはあまり現実的でない。しかもそれをITに関する部分だけでなく、戦略面から統一して記述するとするとさらに事は大きくなる。

一時期EAが重要だと言われつつも、特に日本ではあまり普及しなかったのはその辺りにあるのだろう。もともとはアメリカで政府機関のIT投資の非効率性とプロジェクトの成功率の低さに端を発して生まれたもののようだが、EAの導入でどれだけ改善されたのだろう。結局、EAって何(だったの)だろう。
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