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坪井善明『ヴェトナム新時代』

ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書)ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書)
(2008/08/20)
坪井 善明

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この本はいま現在のベトナムについて、どんな問題を抱えていてどこへ向かっているのかを描こうとしている。民間レベルの事柄も多く触れられているため、とても身近に読むことができる。現代ベトナムについてその問題を知りたいには適する一冊。

ベトナム戦争を勝利に導いた三つの戦略が書かれている(p.28f)。(1)戦場で軍事的に耐え切ること。そのために、犠牲を恐れず団結に徹すること。(2)国際社会、つまり共産圏以外にも途上国、西側先進国の国民の支持を圧倒的に得ること。このため、世界のジャーナリストや作家を直接招聘して戦場を取材させた。また、自分たちに有利な情報を国際社会に提供し続けた。(3)交渉により米軍が撤退するシナリオを計算した。アメリカの民主主義のメカニズムを活用し、アメリカ国内で反戦運動が盛り上がるよう人智を尽くした。アメリカとの交渉が可能となるように、一方的な感情的な反米運動は抑圧した。最終戦争の形へと国民を先導し交渉の余地を無くしてしまうような事態を招かないよう、理性的な判断を行った。

ベトナムは基本的にまだ農作物や原材料の輸出に頼る国でもある。例えばベトナム南部では年間1200万トンを超える原油が採取されているが、自国内に精製工場を持たない。そのため、原油をほぼすべてシンガポールに輸出し、ベトナム自身は石油製品を輸入している(p.63)。また、産業の基礎となる製鉄について、自国内に製鉄所がなく生産ができない。韓国や中国は日本のODAを利用して、資金とともに製鉄技術をうまく移転させ、その後の発展の基礎を築いたがベトナムはそのような状況にない、といった産業の基礎の弱さが指摘されている。

また、ホーチミンを共産主義者としてではなく、共和主義者として理解する試みは著者の試論に当たるが、興味深いものだ(p.174-190)。ホーチミンは自身が個人崇拝を禁じ、遺骨をベトナム北部・中部・南部の3箇所に散骨するよう遺言して亡くなったにもかかわらず、その後の北ベトナム政府はこの遺言を完全に無視。遺体は保存され、ハノイにはホーチミン廟が作られ、紙幣の肖像はすべてホーチミン、政府はホーチミン主義なるものを謳うというように個人崇拝を進めている。こうした中、ホーチミンを冷静に評価するのはなかなか難しい。著者はホーチミンの中から、人が他人を差別せずに、人として平等に扱うという共和国の精神を読み取っている。

最後に、現代ベトナムの4つの弱点が挙げられている(p.240-242)。(1)共産党の一党支配という体制が時代に合わなくなってきている。(2)いまだに通貨主権が確立していない。紙幣の印刷さえオーストラリアに委託している状況。(3)産業構造。製鉄所も大規模な石油精製プラントもない。(4)人材不足。現代的知識の集積が遅れている。
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