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鶴見俊輔『戦時期日本の精神史』

戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)
(2001/04)
鶴見 俊輔

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期待したほどではなかった。カナダのマッギル大学での講義に基づく。日本国外での学生向け講義ノートのため、かなり平易な語り口。逆に言うと、深みが足りない。全体を貫く筋は「転向」についてなのだが、今ひとつ理論的な筋が見られない。そのため、様々な事項が次から次へと散漫に登場する印象を受ける。おそらく日本人向けだったら、もっと深く書けたであろう。

本書は精神史であって思想史ではない。膨大な引用文献に登場するのは、いわゆる論壇の人たちだけではない。一般市井の人のものが多く引かれるのは、著者の特徴だ。日本の様々な立場の人たちが、戦争へと向かうこの激動の時代に何を考えてきたのか、様々な側面において語られていく。

印象に残ったのは、まず西洋思想という「密教」と、記紀を中心とする日本神話の「顕教」という対比。そこから、戦争への熱狂は、顕教が失敗したのではなくて、逆に成功しすぎてしまったことにあるとされる。つまり、国民が本気で万世一系の大和民族という神話を信じてしまったことにあると。ただし、戦争の原因を基本的に軍部上層部の独走に見るのは少し物足りない見方と感じる。

さらに、戦時期にあって弾圧にも負けず自らの思想を変えなかった人々。特に、灯台社(後の「エホバの証人」)の明石順三の話が印象に残った。また、戦後直後の女性たちについての記述。戦争にかり出された男たちがいないところで、家と生活を独力で守ってきた女性たちが抱いた、ある種の「自信」。国家の戦争イデオロギーから離れたところで冷めた目で生活を守った人たち。ただ、あまり多くは述べられていない。

あまり自分に多く響かなかった原因は、私がまだまだこの時代への共感が薄いこともあろう。もしかしたら、世代的な差なのかもしれない。
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