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バリー・ベーム、リチャード・ターナー『アジャイルと規律』

アジャイルと規律 ~ソフトウエア開発を成功させる2つの鍵のバランス~アジャイルと規律 ~ソフトウエア開発を成功させる2つの鍵のバランス~
(2004/08/05)
バリー・ベーム、リチャード・ターナー 他

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システム開発において、計画駆動型手法とアジャイル手法をどう使い分ければ良いか指針を示した本。とてもよく書けている。アジャイル手法は普及してきている。とりあえずアジャイルでやらねばならないのではないか、時代遅れではないかと考える向きもある。そんなことは無くて、計画駆動型手法、つまり「工学分野の主流から取り入れたコンセプトをベースに、明確に定義された標準プロセスを用いて、要求/設計/構築というパラダイムで開発を行う」(p.21)やり方が有効な場合ももちろん多く残っている。重要なのはその間のバランスを取ることだ。本書はどういう開発において計画駆動型手法が有効で、どういう場合にアジャイル手法が有効なのか、具体的に示す。
計画駆動/アジャイルどちらのアプローチも、筆者たちが「ホームグラウンド」と名づけた場所においてこそ、最も快適に機能する。計画駆動型手法の場合、一般にそのホームグラウンドは、安全性が最優先であるような高い信頼性が要求されることが多い、大規模かつ複雑なシステムである。そこでは、要求はきわめて安定したものでなければならず、環境は多少でも予測がつかねばならない。一方、アジャイル手法の場合は、システムや開発チームの規模が小さく、顧客やユーザとすぐに会うことができ、要求や環境が変わりやすい状況のほうがずっと向いている。(p.37)


計画駆動型手法とアジャイル手法の違いは、次の四つの特徴から比較される。開発するアプリケーション(目的、規模、環境など)、マネジメント(顧客との関係、管理の必要性、コミュニケーションなど)、技術(要求定義・開発・テストのアプローチなど)、人(顧客、開発者、組織文化など)。これらの特徴から計画駆動型、アジャイルの様々なアプローチが紹介・整理されており、とても理解しやすい。最終的には、人、変化の度合い、文化、規模、重要度の5要素からなるレーダーチャート(p.187)を使って、そのプロジェクトが計画駆動型手法とアジャイル手法のどちらに馴染むかを分析する方法が述べられる。これはプロジェクトのもつリスクの特性から、それに対処するための手法を選ぶやり方となる(p.126)。

個別の話題では、顧客のプロジェクトにとって適任かどうかを表すCRACKという基準が印象に残った。アジャイルで顧客の全面的で専任の関与を求めると、「顧客の組織からたとえ不在でも組織が最も困らない人が送り込まれてくる」(p.64)リスクがある。そこで顧客の適任性を判断するのがCRACKだ。「顧客の代表者が協力的(Collaborative)で、顧客の意思をきちんと代表しており(Representative)、権限を持ち(Authorized)、献身的で(Committed)、知識のある(Knowledgeable)人」(p.64)が適任とされる。

本書には、アジャイル手法ではリスクに正しく対処できないプロジェクトでアジャイル手法を適用して失敗した例や、プロセスを作り直して上手く行った例など、実際のプロジェクトの例が多く、参考になる。また著者も指摘するようにこうした俊敏性と規律のバランスは、組織における自己規律性と起業家精神のバランスを取ることに他ならない(p.194-196)。一般的な組織論からも学ぶことは多いだろう。
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