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中田宗隆『なっとくする量子化学』

なっとくする量子化学 (なっとくシリーズ)なっとくする量子化学 (なっとくシリーズ)
(2001/11/16)
中田 宗隆

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量子化学の入門的解説書。本の使い方としては、量子化学の初歩の学習の副読本だろう。まったく数式を使わずに学問領域の雰囲気を伝える本ではない。これくらいの数式があったほうが理解はしやすい。この本は日常的な現象を話の枕にしたり、化学ジョークも交えていたりして面白い。

量子化学は電子の軌道という考え方を中心にして、原子や分子の結合の仕方や、それぞれの特質をもたらす量子力学的構造を扱う。本書はまず最も基本となるシュレーディンガー方程式の由来と仕組みを丁寧に辿る。シュレーディンガー方程式の微分方程式の解となる固有関数と固有値として電子軌道の考えが導かれる。水素原子を例にとって様々な電子軌道や、電子のスピン方向、それらのエネルギー準位について解説される。電子スピンはシュテルンとゲルラッハの実験から要請されるものとして導入されており(p.72)、あまり理論的ではないのにやや不満を覚える。ついで原子の話題から発展してイオン、分子へと話が進む。最後には著者自身の研究に近い、最前線の話題をさらりと扱って終わる。

量子力学の記述については、不確定性原理を粒子を観測するにはエネルギーを加えなければならないから位置が確定できないと観測の話で書いている(p.29)のに少し違和感を抱いた。とはいえ、シュレーディンガー方程式を古典物理の考えから導いていく様はよく書けている。物質と波動が区別されていた古典物理では考えられなかったような、物質のエネルギーに波動の式を結びつけた「とんでもない発想」のプランク、アインシュタインの話、ドブロイの物質波(p.11,21,31)からシュレーディンガー方程式を導いている。物質を波動と見なすことという観点からいかに量子力学の基本が作られているかが分かる。

また、水素原子のシュレーディンガー方程式を立てて解くところ(p.47-61)が面白い。まず原子核は相対的に重いから動かないとして、電子の位置エネルギーと運動エネルギーからシュレーディンガー方程式を組み立てている。その後、様々なテクニックを使って微分方程式を実際に解いてみせる。その結果出てくる固有関数がそれぞれ軌道を表し、固有値がそれぞれの軌道の電子のエネルギーを表す。

分子内における原子と電子の間のクーロン力をバネで解説して、フックの法則から分子振動を導いているのもよい(p.132-137)。振動のエネルギーが決してゼロにならず零点振動が存在することも、エネルギー固有値の形から見て取れる。また分子内における原子と電子の回転運動エネルギーもシュレーディンガー方程式を使って導かれている。電子の軌道とスピン、分子振動、分子内の回転運動というこの三つが、様々な分子スペクトルを生み出している。
分子がある電子の状態から別の電子の状態に移るときに紫外・可視光線を吸収する。また、ある振動の状態から別の振動の状態に移るときには赤外線を吸収する。同じように、ある回転の状態から別の回転の状態に移るときには、マイクロ波を吸収する。(p.176)

後半の話題では、各種の異性体から量子化学計算により一番安定したもの(エネルギーが最小のもの)が分かるという話(p.231-234)が多い。それまでは実験によって安定した構造を探らなければならなかったが、コンピュータを用いて理論的に計算できる。これはちょうどコンピュータを用いた計算が取り入れられていく時代を過ごした著者の感銘なのだろう。

各節の頭に枕話として置かれている、日常的な現象の量子化学的な解説が楽しい。例えば、植物は緑なのは、太陽光のうちもっともエネルギーの高い赤色を効率よく植物は吸収して緑が反射されるため(p.7f)。夕焼けは赤いのは、太陽光が大気を通過する距離が夕焼けでは天頂方向より長く、レイリー錯乱により青色は錯乱が多く弱くなって赤色が残るため(p.160-162)。電子レンジで物が温まるのは水分子が正三角形でなく二等辺三角形をしており、回転によって電子双極子モーメントが生まれてマイクロ波を吸収するため(p.177f)。りん光は電子スピンの方向の変化であり、比較的ゆっくりと進行すること(p.147-151)。
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