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齋藤紀先『休み時間の免疫学 第2版』

休み時間の免疫学 第2版 (休み時間シリーズ)休み時間の免疫学 第2版 (休み時間シリーズ)
(2012/02/17)
齋藤 紀先

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主に医学部の学生向けに書かれた免疫学の副読本。書いてあることのレベルは落とさないながらも、整理して読みやすくしようとしている。タイトル通り、学習の休み時間に読むもの。教科書にあるような細かいレベルの事柄は書いていないが、全体の見取り図を得られるように配慮されている。

内容は標準的なもの。体液性免疫と細胞性免疫のそれぞれの働き方をざっと解説。その後、それらのプロセスで登場する物質や細胞を一つづつ取り上げる。ついで免疫の過剰・過少によって引き起こされる、アレルギー(I型~IV型)、免疫不全、SIRSの仕組み。最後に、様々な細胞誘導物質に応じて引き起こされる細胞内の分子生物学的プロセスを扱っている。最後の細胞内プロセスはこれでもかなり省略してあるとのことが、多くの物質が次々と登場して読みにくく感じる。

免疫学は一般的書物をいくつも読んだので、それよりステップアップしたものとしてちょうど良かった。例えば、一般向けにはマクロファージがまず異物を貪食してCD4+ナイーブT細胞に抗原提示するストーリーとして述べられる。本書にはマクロファージの他にマスト細胞や樹状細胞が貪食細胞として登場し、特に樹状細胞の抗原提示能力の高さが述べられている。樹状細胞の抗原提示能力の高さへは1990年代以降になって注目されたもの(p.90)。また抗原提示における補助刺激分子の役割(樹状細胞の抗原提示能力が高いのは、補助刺激分子を多く持つから)。補助刺激分子はT細胞のアポトーシスを抑制するところ(p.29)は面白そうだが、さほど詳細が書かれていない。

活性化マクロファージによるウィルス不活化も、あまり知らない話題だった。NK細胞やCD4+ナイーブT細胞から分化したTh1細胞から産出されるIFN-γによってマクロファージが活性化するもの(p.56f)。後は、Th1とTh2の相互抑制の仕組み。Th1は細胞性免疫、Th2は体液性免疫へ導くサイトカインを産出するが、それぞれのサイトカインはお互いの産出経路を阻害するように働く。また、Th17とTregによってもたらされる炎症反応を進めるか終わらせるかのバランスもよく整理されて見通しが良い。
Th1/Th2バランスが(細胞性免疫か体液性免疫かの)左右を決めるハンドルだとすれば、Th17/Tregは「免疫反応のアクセルとブレーキ」というイメージでよいかもしれません。(p.107)
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