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梅屋真一郎『人事・総務のためのマイナンバー制度』

人事・総務のためのマイナンバー制度 (労政時報選書)人事・総務のためのマイナンバー制度 (労政時報選書)
(2014/12/17)
梅屋 真一郎

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マイナンバーの情報には多く接してきたが、ようやく具体化してきた感じ。この本は2014年10月末の情報を基にしている。民間企業側の一員として制度設計にかかわっている人の書いた本。民間企業の対応として求められるものについて信頼が置ける記述になっている。民間企業といっても、記述の主な対象は金融機関以外の個人番号関係事務実施者。

同じ話が何回か繰り返されて徐々に詳しく書かれていったりしている。個々のトピックについてのまとまりはとてもよいが、全体的な構成としては少し飲み込みにくい。例えばこの本の一つのポイントは個人番号の安全確認について。企業内で従業員から個人番号の提示を受けるときには本人確認が必要。このことは冒頭から何度も出てくるが、実際に本人確認ということで何をすればいいのかが書いてあるのは後になってからだ(p.81-97)。

いままでは概要レベルの本が多かったが、この本ではやや具体的に、民間企業が躓きそうなポイント、検討・対応のためのフローなどが触れられている。安全管理の中では、例えば一部業務フローを変える必要がある。従業員が健康保険組合に提出すべき書類を、企業側の総務部が取り集めて健保側に渡したりすることがよくある。これは個人番号の目的外取得となり法令違反のおそれがある。これを避けるには、従業員から委任状を受けるか、健保から業務受託するかである(p.92-97, 103-105)。後者の業務受託は、個人番号利用事務実施者と同じ体制を構築しなければならなくなるのであまり現実的ではないだろう。こうしたちょっとした業務フローが引っかかってくる可能性があることが書かれている。

システム的に面倒が大きいことを再認識したのは、退職者の情報の扱いだ。退職して情報が不要になった人の個人番号を保持し続けるのは、法令上問題がある。退職した人でも給与台帳は7年保存などの法規定があるので、データは保持している。ストレージの許す限り年数を限らず保存しておくことが多いだろう。ところが個人番号に関しては、決められた年限を超えた保存は許されない。したがって、個々の法定保存年限でそれぞれの情報を破棄しなければならない(p.136-140)。これはかなり厄介だ。

個人番号関係事務はかなり厳密なので、正直なところすべてを額面通り対応するのは不可能だろう。どこまで何を妥協してよいのかが知りたいところとなる。例えば給与所得者の扶養控除等(異動)申告書にも個人番号を書くことになる。これは全従業員が年一度提出するものだから、年一回、全従業員の個人番号を本人確認とともに取得しなければならない。ただし、雇用関係から本人に間違いないことを利用事務実施者が確認できるときは身元確認は不要(p.91)。ということで一度取得すれば、翌年からは番号に相違ないことを確認すればよい(それでも一度取得するのは大きな労力だ)。こうした業務軽減に向けた措置はもっと解説してほしいところ。

対応開始時期については2016年1月から制度開始だが、全員のマイナンバーは2016年夏前の社会保険料の定時決定にあればよいようだ。ただし、退職者については都度の対応が必要となる(p.42-44, 73, 153f)。退職者は個別対応するとしても、全面的な対応のデットラインは2016年7月となるだろう。

本書には検討の流れのフローとして、業務の洗い出し、対応案の検討、安全管理の検討、対応作業・方針確定のフローが書かれている(p.70-72)。こうした流れは参考になる。ただ、いまさらこのレベルをやっていると遅いだろう。また安全管理についても、事務範囲の明確化、個人情報の特定、担当者の設定、方針・取扱規程の策定という順番が書かれており、こちらも参考なる(p.119f)。
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