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フェルナン・ブローデル『地中海〈4〉』

地中海〈4〉 (藤原セレクション)地中海〈4〉 (藤原セレクション)
(1999/03)
フェルナン ブローデル

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地理学的な記述を終えて、この巻からは中期的な流れの記述に入る。ここでは主に人口の増加の話と、経済活動における物流が語られている。地中海は通常思われるよりも、農業生産としては貧しい土地だというのがブローデルの認識のようだ。これに加えて都市への人口集中がある。都市は安い労働力を求めるし、またそうした人口を支えるために近隣から食料供給を必要とする。かくして都市の近郊には、少ない労働力で多くの食料生産を課せられる貧しい地方があることになる(p.64)。このような都市への集中と自然の不毛のため、地中海地域には無人地帯が多い(p.84)。広大な砂漠の中にオアシス都市が点在するようなイメージだ。

この巻でのブローデルは非常に慎重に見える。それは16世紀の人口増加について。ブローデルの見立てでは、この一世紀の間に地中海の人口はおそらく二倍、3000~3500万人から6000~7000万人へ増加した(p.91)。この主張を導くための議論はかなり慎重。様々な側面から多様な資料を引き出し、結論もそこまで強くないものとして提示している。とはいえ、この世紀にはあまりにも人口が急速に増加したので、農業資源の拡張(土地改良など)やそれに伴う収穫量の増加が追い付いていない(p.126)。食糧不足は以前より頻繁にあったが、一回一回の程度が悪化していく。こうして17世紀の危機へとつながる。

本巻に収められているもう一つのテーマは、金銀など貨幣の流通とそれに伴う物価の変動について。特にスペインを中心としている。これはこの本全体がそもそもフェリペ2世の治世下のスペインを焦点に当てているからでもある。地中海はそもそもいつも東方との貿易が赤字で、金銀が流出していた(p.189-193)。この金の出自の一つがスーダンの金として扱われる。北アフリカの金銀はポルトガルがギニア湾沿いの貿易を開拓するにあたって、さらに地中海に流れ込む。アメリカ大陸で産出された銀も供給される。

転機となるのは1567/69年からのアントワープの没落だ。これによって、西洋経由、あるいはフランスの陸路でアントワープに向かっていたスペインの金銀が地中海、特にイタリアに溢れ出す(p.236-240)。イタリアはまさに夥しい貨幣の犠牲となる。イタリアはそもそも、北アフリカで産出されアントワープへ向かう南北の金の流通と、イベリア半島からレヴァントを経て極東まで続く銀の流通の交わるところである(p.245)。貨幣が多すぎれば貨幣価値が下がる。それにともなって起こるのは物価の高騰である。
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