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星野達也『オープン・イノベーションの教科書』

オープン・イノベーションの教科書---社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ
製造業におけるオープン・イノベーションの実例と進め方を書いた良書。日本の製造業が今後生き残っていくためには、やはりその技術を磨くしかない。技術を磨くには、自社内に拘っている必要はない。他社といかに連携して新たしい技術を生み出していくかが、生死を分けることになる。現在では、社外のリソースをいかに取り込んでイノベーションを起こすかが重要となってきている。それこそ、オープン・イノベーションだ。オープン・イノベーションが広まってきた背景には、研究者・技術者の世界的拡散、中小企業の技術力向上(中小企業のほうが技術開発に投じる資金の割合が多い)、コンサルタントなど仲介業の存在である(p.51-55)。ちなみに日本で一番オープン・イノベーションが進んでいる業界は、医薬品業界である(p.178)。

オープン・イノベーションの先駆者であるフィリップスを始め(p.25-36)、「2000年以降、オープン・イノベーションという考え方が世界中で拡大している」(p.37)。著者はこのオープン・イノベーションを3つのタイプに分ける。コンソーシアム型、技術探索型、技術提供型。コンソーシアム型は、各参加者が異なる知見を持ち寄り新技術を開発するもので、利益は参加者で享受される。技術探索型は、外部の技術を探しだして自社の製品に応用するインソーシング。技術提案型は保有する技術を売り込むもの(p.40)。主に後者の二つのタイプについて、その実例を示しながらポイントを説いている。

技術探索型は4つのステップに分けられている。1.社会に求める技術を選定すること、2.技術を探索すること、3.技術を評価すること、4.技術を取り込むこと(p.57)。しかし重要なステップはその前のステップ0だ。まず、会社を外部に開いていくことの啓蒙活動が必要である。というのも、オープン・イノベーションを始めるには社内からの反発が予想されるから。企業トップが強力な意志を持ってコミットし、ミドルマネジメントへと浸透させていくことが重要(p.68-72)。技術探索型でもっとも頭をつかうのは、最初のステップにおいて外部に求める技術を明確化するところだ(p.82)。求める技術が明確でなければ、外部の誰も応じてはくれない。組織面から言えば、必要不可欠な要素は3つ。トップのリーダーシップ、現場のモチベーション、サポートする推進チームである(p.118)。

本書の多くの部分は技術探索型の説明で、技術提案型はその半分くらいの分量。技術提案型の説明では、提案書の書き方にまで話が及んでいる。控えめすぎる日本企業に対して、技術提案の4ステップがアドバイスされている。1.技術募集を探す、2.提案書を送る、3.フィードバックを受ける、4.技術の磨き込み(p.210-219)。技術提案型の実例紹介はかなり著者の熱を感じるような記述となっている(p.234-246)。大いに参考になるだろう。

基本的には製造業の話なのだが、もちろん他業界でも使える話。自分の現在携わっている分野でも活きてきそうな論点が多かった。後はいかに現場に展開するかだ。
資源も持たず、労働人口が減少し続ける日本において、今後メーカーが生き残る道はモノづくりの効率化にある。水平統合、垂直統合、あるいは選択と集中といった業界内の再編は、あくまでも生き残りのための体制づくりにすぎない。モノづくり企業である以上は、モノづくりで勝負できなければ将来はない。
そのために必要な要素が、研究開発の効率化である。そして研究開発効率化のための手段の1つが、オープン・イノベーションなのだ。ある製品の開発に、自前で5年かける企業と、外部の力を利用して3年で終える企業とでは、どちらが競争力を持つのか。いま一度、考えなければいけないのだ。(p.194f)
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