Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://exphenomenologist.blog100.fc2.com/tb.php/78-0a84442b

トラックバック

松本仁一『アフリカ・レポート』

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)
(2008/08)
松本 仁一

商品詳細を見る


素晴らしい本。アフリカの現状についてまず知るには最適。ゆっくり読んでも、2時間もあれば読める。読んでほしい。何も行動せずとも、まずは感じることならできる。

amazonに読書記掲載。
-------------------------------
素晴らしい本だ。アフリカの現状、惨状についてのジャーナリストの報告。独立から多くの年月が経ったのに、いまだに悪い状況を脱せないアフリカ諸国。その状況を現地取材。アフリカ諸国に生きる、一般の人々の視点を通じて描いていく。

第一章・第二章で最初にアフリカの現状のレポートとして挙げられるのが、ジンバブエと南アフリカだ。ジンバブエの驚異的なインフレは知られたところ。また、アパルトヘイトを克服したにも関わらず、非常に高い犯罪率に悩む南アフリカ。この二つの国はどうしてこうなってしまったのか。

驚いたのは、イギリス領ローデシアから独立したばかりのジンバブエは、アフリカでも有数の農業国だったこと。肥沃な土地を持ち、農民の生産性は高く、農産物の輸出国として多くの外貨を稼いでいた。そのような経済システムを独立後のジンバブエ、特にムガベ大統領は破壊してしまった、と著者の評価は厳しい。自らの利権ばかり追求する政府関係者に、意欲を奪われる農民たち。彼らの視点からレポートされている。また、南アフリカの状況でも、一般市民の視点を忘れない。高い犯罪率に危険を冒して立ち向かう警察官たち。だが、その給料は安く、遅配・無配は頻繁。政府が治安に対して社会投資していないのだ。これら二つはアフリカの典型例だ、と筆者は記す。農業、治安、教育、医療・・・これらは利権に結びつかないから、政府は力を注がないのである。

続いて第三章では、アフリカにおける中国人の状況が描かれる。中国はいま、国家戦略としてもアフリカに目を向けている。豊富な原油や鉱物資源、水産資源の確保を狙っている。国家ばかりではなく、民間レベルでも中国人ビジネスはどんどん拡大している。そのやり方は時にえげつない。アフリカの資源から得られる利益は、アフリカの市民には回らない。大半は中国人の間で循環し、残りはアフリカ政府の私腹に入る。

第四章では国を捨てたアフリカ人たち。パリのマリ、ガーナ出身者のコミュニティ。歌舞伎町でのナイジェリア出身者コミュニティ。一人の人間を取り上げて、そこからその国の問題を浮かび上がらせる。ジャーナリストの腕の見せ所だ。

ここまではかくも暗澹たるアフリカ国家の状況だ。第五章、第六章でようやく光が差す。ここでは自発的に、民間レベルで国を良くしていこうという運動が描かれる。第五章ではジンバブエの市民NGO。第六章では日本人が経営する、アフリカ企業。著者が見ているポイントは、あくまで住民の自発性を尊重することだ。ただでモノを配る援助は、住民たちを依存させるだけ。大がかりな公共事業は、モノ作りの間だけ雇用が生まれるが、後には以前と同じ失業が待っているだけなのだ。住民たちが技術を身につけ、生きるための産業を興していかなければならない。

総じて、描き方が鮮やかで素晴らしい。アフリカにおける中国の動向を押さえている辺り、着眼点がしっかりしている。最後に惨状のなかで何とかしようとしている人々のことが書かれているのが、読んでいても救われた気分になる。バランスの取れた良書だと感じた。ただ、アフリカがなぜこんな状況になったのかについて分析はない。多民族国家という指摘があるが、それはアフリカ固有の問題ではない。現状の分析を期待する本ではない。

アフリカの住民たちに希望を持たせるのは、ある意味単純なのだ。それは、自分の努力に対する正当な報いを与えること。きちんと働いた人間には、遅配せずきちんと給料を与える。こんな基本的なことが大事なのである。この最低限の「資本主義的」発想、「私利の追求」が社会を好転させるのだ。しかし、それがいかに難しいことであるかをアフリカの現状は教えてくれる。
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://exphenomenologist.blog100.fc2.com/tb.php/78-0a84442b

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。