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後正武『意思決定のための「分析の技術」』

意思決定のための「分析の技術」―最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法 (戦略ブレーンBOOKS)
とても良い本。複雑、曖昧、不確定な物事をどういった切り口や手法で分析するか。そしてそこからいかにして意思決定のための情報、経営への示唆management implicationにあふれた情報を取り出すか。これらがコンサルティングの現場での実例を豊富に交えながら論じられる。

内容はざっくりと全体を押さえることの重要性や、MECEの基本原則、評価軸を揃える比較(apple to apple)、時系列変化とパターン、分散の考慮、プロセスで考えること、などなど多岐に渡る。類書でもよくある内容もあるが、独自の面白い視点も満載。

例えば、市場シェアの話。市場シェアは通常、自社製品の売上高÷市場規模で表す。本書にはこれを、市場カバー率×販売力で分析する方法が載っている(p.72-75)。つまり、販売チャネルを網羅しているかどうかのカバー率と、そのチャネルの中で競合に比してどれだけ売れるのかの販売力をかけあわせている。こうして市場シェアを自社の要素に分析し、問題のありかたを分析することができる。

時系列で比率を表したグラフで、最終年(現在)を100とする方法も面白い(p.93-95)。開始年を100として、そこからの比率で時系列を表していくグラフはよく見かける。最終年を100としてみると、見えてくるものがかなり違う。一度試してみたい方法だ。

シェアの漏れ分析もよい記述。市場全体から、一度もアプローチしていないユーザー、アプローチをやめたユーザー、他社に競合で負けたユーザーと引いていくと自社のユーザーが残る。そしてこれが競合で勝ったユーザーと、競合なしで自社が得たユーザーに分かれる。ここには、他社も自社もアプローチしていないユーザーが市場内に存在する。また、潜在的にユーザーになりうる(=市場拡大の余地がある)ものも存在するだろう(p.156-158)。このように誰もアプローチしていないユーザー(アウトユーザー)と潜在市場を漏れユーザーに組み込んでいるのが面白い。

さらに不確実な状況での分析・判断について、揚げられている4つのアプローチが参考になる(p.206-228)。それは(1)信頼性のレベルによる情報の分類、(2)ロジック・フレームワークの活用、(3)プロセスで考えること、(4)多数の意見の集約。信頼性のレベルとは、信頼性の高い順に事実、法則、経験則、推定、意見、想像という分類。現在手にしている情報がどのレベルのものなのかを押さえたうえで、当座の意思決定を行う。また多数の意見の集約は、デルファイ法が詳説される。デルファイ法は何だか大げさな感じがするので真っ向に使われているのはあまり見ないが、著者は特にインタビューと組み合わせた方法を推奨している。
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