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森岡毅『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?
非常に面白い一冊。マーケティングの現場から、アイデアをいかに生み出し、それをいかに実現していくか。P&GからUSJのマーケティング担当者として転職した著者。著者が入社した2010年頃のUSJは当初の勢いを失っていた。年間入場者数は低迷。社内の雰囲気も守りに入るものだったという。著者はマーケティングの専門家としての戦略立案と、それを実現する強い熱意をもってUSJを変えていく。特に2014年のハリー・ポッターのアトラクションは、年間売上高800億円の会社にして450億円の投資金額をつぎ込んだ。こうした施策を経て、USJは関東のTDRとはまた違う独自のテーマパークとしてすっかり定着しつつある。

本書はこうした著者の奮闘ぶりを書いたもの。そしてそこで得られた経験を元に、効果的なアイデアの生み出し方について書いている。記述が熱を帯びていることもあって、読んでいてとても面白い。実情を知る人からはやや自信過剰、または人の手柄を自分のものと僭称しているように見えるかもしれない記述もある。例えば、当時のCEOであるグレン・ガンペルとの採用面談のエピソード(p.18-20)は、かなりカッコいい。思わず唸る。

著者は数字に強いマーケターということもあり、USJ入社を決めてから2週間、さらに入ってからの100日で、ほぼその後の展開のプランを描いている。それは三段ロケットと称される。一段目はまずファミリー層をしっかり取り込み、安定したキャッシュを得ること。二段目は遠方からも客を呼べるような施設により、関西依存の集客構造から脱却すること。三段目はUSJという会社が得たノウハウを複数の場所に展開すること。こうした戦略プランを裏付けとなる数字とともに初期の段階で作っている(p.25-32)。入社100日が大事とはよく聞くが、相当凄いものだ。

USJが好きだったり行ったことのある人ならば、ここ数年の変化がどうやってもたらされたのが書いてあるので、楽しいだろう。ハロウィーンイベント、ワンピースやモンスターハンターとのコラボレーション、4K3Dの技術を用いたスパイダーマンのリニューアル、ユニバーサル・ワンダーランド、バイオハザード、そしてタイトルにもなっている逆走ジェットコースター。

特に2011年の震災の影響への対処が印象に残る。ハリー・ポッターに向けた大きな投資を行うために、それまでの期間は小さい投資で確実なキャッシュを得なければならなかった。しかも2011年はUSJの10周年。資金をかけずに大きく盛り上げなければならない。しかし震災の影響の自粛モードは関西でも色濃く、4月にしてすでに計画年間来客数から何十万人ものビハインド。ここから著者のチームは、まず小学生以下を無料とするキッズフリーの施策を打つ。さらに同年の夏、秋、冬に向けて次々と施策を生み出す。ひねり出すと言ったほうがよいかもしれない。そしてそれが狙ったとおりに当たっていく。これはつまり、衝突を回避するのにブレーキを踏むのではなく、別方向にアクセルを思いっきり踏むことだ(p.65)。逆境にあっても諦めず、常に攻めの姿勢を失わない著者らしい展開だと思う。

タイトルにもなっている逆走ジェットコースター、バックライドのエピソードもそんな姿勢が生み出したもの。資金がなければ既存の施設を活かし、リニューアルするしかない。アイデアの死体の山を毎日積み上げながら、それでもアイデアを求めて現場を回る日々。完全に行き詰った状況の中で、夢の中で逆走するジェットコースターのアイデアを得たという。これはそこまで考え抜く姿勢や情熱もさることながら、その後の社内の反対への対処を含めて、かなり印象的なエピソードだ(p.134-142)。著者は徹底的に現場を回り、またエンターテイメント系で話題になったものは何でも自分で試してみる(p.84f)。「価値を生み出すアイデアの切り口は、経験上ほとんどの場合は「消費者理解」の中に埋まって」(p.70)いるのだから。

本書の後半は、こうした数多くのアイデアをいかに生み出すかを抽象化して語っている。その方法論は、イノベーション・フレームワークと呼ばれている。このフレームワークがあれば、誰でもアイデアを生み出せるようになり、「アイデアを天才から凡人の手に取り戻す」(p.8)ことができる。イノベーション・フレームワークは4つの要素からなっている。フレームワーク、リアプライ、ストック、コミットメントだ(p.150-153)。

まずフレームワークはアイデアを探索する領域や方法を絞り込むことにより、よいアイデアが出る確率を高めるもの。無駄な努力をしないで済む。著者はフレームワークを戦略的、数学的、マーケティングの三つに分ける。戦略的フレームワークとは、目的→戦略→戦術(=アイデア)で描かれる。まず目的を明確に設定する。戦略はその目的を達成するためにリソースを集中させる事柄のこと。戦略はその下位レベルの戦術に対し、それが満たすべき必要条件を定義する。つまり、最終的にやりたいことが何で、そのためにどんな要件が必要かを明らかにし、その要件を満たすアイデアを探索していく(p.153-158)。数学的フレームワークとは論理的分析のこと。問題をMECEに分けて、それぞれの領域で探索を行う(p.164f)。マーケティングフレームワークとは、消費者のブランド認知や購買行動までの過程をプロセスに分解して、どのプロセスが弱いのかを見ていく(p.168)

リアプライは他の人が実現していることを参考にすること。これは単なるパクリや模倣ではなく、考え方や一要素を拝借するもの。アイデアをゼロから生み出そうとすることは日本人の悪い癖だと著者は言う。アンテナを広げ、世界中からアイデアを探すことが必要だ(p.126ff, 171ff)。ストックとは文字通り、様々な分野の事柄に興味をもち、アイデアの元をストックすること。知らなくて分からないものは、そこにいかにアイデアの種があっても気付けない。重要なのは、最後のコミットメントだろう。著者の諦めない姿勢は驚異的だ。執念を持って、あきらめずに考えつくまで考え抜くこと(p.178-185)。「地球上でもっとも必死に考えている人のところに、アイデアの神様は降りてくる」(p.183)。

本書はアイデアの生み出し方を中心に書いているので、それを実現していく過程はさほど光が当たっていない。だが、本当に困難なのは実現過程だろう。いかに優れたアイデアでも、それを実現するには様々な反対意見やリソースの制約にぶつかる。執念や熱意が求められるのは、実現過程のほうが多いのではないか。でもそれが実はまた面白い過程でもある。むしろ現場でいかに実現していくかに興味がある自分には、次の言葉はよく響く。
どんなに優れた戦略も、どれだけ革新的なアイデアも、エクセキューションが強くないと結局はビジネスとして実らないのです。本書はアイデアを生み出すところに力点を置いて書いていますが、そのアイデアが実際にどれだけ成功するか、最後のビジネスの結果は、エクセキューションで決まることだけは、この章の最後に強調しておきたいと思います。(p.201f)

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