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奥村宏『会社本位主義は崩れるか』

会社本位主義は崩れるか (岩波新書)
法人間の株式の持ち合いによって成り立つ法人資本主義が日本の資本主義の特徴をなしている、というのはこの著者の一貫した主張。本書では法人資本主義の原理としての会社本位主義(p.10f)を扱っている。会社本位主義とは、株主や従業員より会社そのものを重視する考え方。会社本位主義を支える制度として、終身雇用や企業系列、企業別労働組合などが論じられる。

会社本位主義、政・官・財の相互関係、そしてグローバリゼーションや直接金融の普及になどにより、こうした構図が崩れていく様を描いている。ただ、それぞれの要素がゆるやかに関連していて、あまりまとまりを感じない。それは、法人資本主義が必ずしもこうした戦後日本の資本主義構造と同じ歴史を持っていないからだろう。本書が述べているもっとも重要なポイントはこれだと思われる。

終身雇用や企業系列・集団といった会社本位主義、日本的経営をなす要素が、多く戦時中の翼賛体制に由来していることはよく知られている。日本的経営は日本人の性質にあったものとか、日本古来の伝統的なものと言われることもあるが、そもそも違う。法人資本主義はさらに違う。著者の言うところ、これは1947年以降行われた独禁法の改正による事業会社の株主保有解禁、また1965年の資本自由化政策とそれによって可能になった外国資本による乗っ取りを防止しようして生まれたものだ(p.190f)。義理人情を重んじる「日本人」が取引先間でお互い様として株式を持ちあったものではない。したがって他の日本的経営の要素とはつながっていないのだ。
株式所有の法人化ということは、昔からの日本に固有のものではなかった。戦前はもちろん、戦後しばらくも個人所有が多かったし、そして独禁法が改正されなかったら法人化は今ほど進んでいなかったという意味で、それは総じて制度的な要因によるものだといえる。決して日本固有の伝統的なものではない。(p.15)
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