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鈴木淳『維新の構想と展開』

維新の構想と展開 日本の歴史20 (講談社学術文庫)
五箇条の御誓文(1868年)から大日本帝国憲法発布(1889年)に至る明治政府の政策展開を追ったもの。細かな資料をたどりながら、五箇条の御誓文で記された方針が大日本帝国憲法に向かって展開されていく様を描く。廃藩置県に代表される行政機構の改革に始まり、戸長として各地方の末端行政を担った人たちの捉え方、士族への対処、造船業や紡績業に代表される殖産興業といったトピックが扱われる。基本的には明治政府の制度面からの展開を書いたものなので、この時代の政治に大きな役割を果たす他の側面、例えば自由民権運動の高まりはメインのトピックとして扱われていない。

基本的事項を知っているわけではないので、各事項の位置づけについては興味深く読んだ。例えば、五箇条の御誓文は江戸城総攻撃の前日に行われた天神地祇御誓祭という儀式で述べられた。この儀式は、朝廷側が戦いの目的を示して団結を確認する意味があった。五箇条の御誓文が具体性を欠いているのは、団結のために抽象的で高い理念を掲げたからである(p.18-20)。そして大日本帝国憲法発布の儀式の一環として行われた紀元節御親祭は、出席者については公家らであって共通する所も多いが、紀元節御親祭では天神地祇への誓いがなくなっているなど、違いがある(p.284-287)。憲法発布では天皇みずからが臣民に対して権限を顕示する側面が強くなっている。

各地方の戸長たちが明治政府の様々な政策をいかに受け止めたか、という視点は面白い。各地方のかなり細かい事項を扱いつつ述べられている。戸長とは「民衆に対して政府を代表する面と、政府に対して民衆を代表する面」(p.115)の両方を持っていた。明治政府から寄せられる多くの新しい情報にふれ、地域における維新の担い手になったのは戸長たちであった(p.115-122)。

士族の取り扱いについて明治政府は苦慮した。本書は士族対策の様々な試みが扱われている。主には警察と軍隊への吸収だろう。特に警察機構の巡査は、不平士族の反乱鎮圧、士族の就職先確保、風俗習慣の開花のために活用された(p.166-170)。また秩禄処分という形で士族の特権は廃止されていくが、各地での国立銀行の設立がこれに関係している。秩禄処分によってもたらされた秩禄の受け皿として設立された国立銀行は各地での産業の振興を支え、また士族の近代産業への転身を促したのだ(p.180)。

士族は警察、軍隊、官吏、教師として姿を変えていった。士族の不平対策として取られたこれらの政策は、まさに維新を進展させる重要な要因であった(p.185)。
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