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堀江康煕『地域金融機関の経営行動』

地域金融機関の経営行動地域金融機関の経営行動
(2008/08/28)
堀江 康煕

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面白かった。地域の金融機関、わけても地銀と信用金庫がこの20年ほどどのような経営をしているかを分析した本。この分野は全然知らなかったので、とても学ぶことが大きかった。

著者によれば、地域金融機関の経営分析には新古典派の経済学的分析はそぐわない。つまり、利潤を最大化するように、貸出による限界収入と限界費用の一致点まで貸し出しを増やす行動をしているという分析は成り立たない。なぜなら、地域で活動する金融機関の貸出先となる企業数は限られている。自由に貸出を増やす行動は取れない。むしろ、地域金融機関の置かれている経営環境を詳細に分析する必要がある。それは貸出の需要となる地域の経済状況、そして当該地域での他の金融機関との競争関係である。

これらの分析は様々な統計資料を用いた多変量解析によってなされる。まず、日本の各都道府県における所得格差(ジニ係数)が一般的に分析される。この分析は他の様々な人が試みている。それによれば、東京都とその他の地方の格差が拡大している。著者はこの一因を地方への公的支出への減少に見る。また、東京都内部での格差も拡大している。これはもともと富裕層が多いことと、高齢化の結果である。地方の内部では格差はそう広がっていない。むしろ、みな一様に貧しくなっている。次に金融機関の経営環境に大きな影響を及ぼす、貯蓄率についての分析が続く。これによれば、中高所得者も含め、全体的に貯蓄率が落ち、無貯蓄世帯が増えている。これらの状況には高齢化が大きな役割を果たしている。

そして地銀の分析へ向かう。バブル期以前の日本では、金の流れは地方から東京へ向かっていた。多くの企業が東京に本社を構え、そこから給料という形で地方支社の社員へと金が流れる。それが地銀へ預金される。地銀はもちろん地方での貸出もするが、その預金はコール市場において都市銀行へと流れていた。しかし低金利時代を迎え、この流れは縮小する。こうして、地方金融機関の本懐である関係依存型取引relationship bankingが再び注目を浴びることになる。

だが、縮小しつつある地方の経済状況では関係依存型取引だけではやっていけない。そこで分析の対象となるのが、近隣地方への進出、シンジケート・ローンへの参加による大都市圏への貸出、小口のビジネスローンや住宅ローンである。特にシンジケート・ローンや住宅ローンは、スコアリングに基づく市場型取引transaction bankingである。この分野での地銀の活動が、関係依存型取引に及ぼす影響に著者は注目している。

信金の分析は一辺500m四方の範囲に区切った地域的分析がなされる。この単位で顧客となる企業数、競合金融機関の支店数などをパラメーターとして、信金の経営環境の分析がなされる。また、もう一つの章では、ここ20年弱で多発した信金の破綻を分析している。信金の企業としての組織力(役員数と本部部室数との比率)を要因に入れているのが興味深い。

知らないことが多かったので読むにつれ、面白かった。都銀と地銀でかくも違う。特に信金は相互互助組織的なところがあるから、一般市民にはなじみが薄い。地銀の分析と比べると観点のだいぶ違う分析だったので、地銀と同じような観点からの分析も知りたかったところ。relationship bankingについて興味が大きくなった。
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