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和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦『マーケティング戦略』


こちらはビジネススクールや経営学部の教科書。実務的な本ではなく、企業が行うマーケティング活動を理論的にまとめたもの。マーケティングの4Pを中心としつつ、企業が商品を通して市場とか変わっていく仕方を整理している。

教科書なので無味乾燥に近い記述も多い。実務では直接使える本ではないが、整理の仕方や概念を巡る議論に面白さを感じるところがある。例えば、製品ライフサイクルという概念の自立性への疑念。製品ライフサイクルはマーケティングにとって説明変数なのか、目的変数なのかという議論がある(p.185f)。広告の分類の中で、商品の便益を伝える情報提供型広告、他との差別を伝える説得型広告、他との直接的な比較をする比較広告、そしてリマインダー型広告が挙げられる(p.238-240)。リマインダー型広告は成熟段階にある商品によくあるもので、ブランドを忘れさせないようにする広告。コカコーラの広告は商品の便益も、新たしい需要の創出でもなく、単にみんながすでに知っているものを忘れないようにする効果が大きいそうだ。

ソーシャル・マーケティングと関係性マーケティングはよく知らない領域なので興味深く読んだ。ソーシャル・マーケティングには二つの流れがあって、一つがコトラーのような企業のマーケティングを非営利組織に適用した、非営利組織のマーケティング。もう一つがレイザーに代表される、それまでのマネジリアル・マーケティングに欠けていた、社会的責任や社会倫理といった視点を導入する社会志向のマーケティング。これらはマーケティングは利益志向であって社会的責任を果たしていないという批判を、コトラー流ではマーケティングが非営利組織にも適用できることをもって回避するのに対し、レイザー流では真正面から受け止めているという形に整理される(p.312f)。

関係性マーケティングは、市場への適合fitから市場との相互作用interactionを基本原理とする。消費者が購買行為そのものより消費プロセスを重視するようになったこと、製造と小売が流通パワーを奪い合うよりも協調するようになったこと、そして企業自体にも情報公開が求められIR活動が重視されるようになってきたという3つの要因から生まれている(p.338-340)。消費者との相互作用によるブランドの醸成など、たしかに今後は関係性マーケティングが重要となってくるだろう。それが扱われているのが最終章の20ページ弱のみというのが、教科書としての本書の位置付けをよく表している。
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