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奥村昭博『経営戦略』

経営戦略 (日経文庫―経営学入門シリーズ)経営戦略 (日経文庫―経営学入門シリーズ)
(1989/02)
奥村 昭博

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手軽に読めるが本格的な本。また機をみて読み返そう。

amazonに読書記掲載。
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古くはあるが、とてもよい本だった。経験曲線やポートフォリオ戦略などの有名な経営分析技法はしっかり紹介。しかしそのような分析的な経営戦略の立て方を批判。市場や収益構造の分析を通して導き出される分析型経営戦略に対して、経営の意思決定における(分析から見た場合の)「不合理性」を扱おうとする。

ホンダの例が面白い。50ccのオートバイ、スーパーカブでの海外進出に当たって、ホンダの社内調査では東南アジア市場がもっとも可能性が高いと出た。しかし、トップの決断は、もっとも可能性が薄いとされた北米市場への進出だった。分析型経営戦略からすれば、北米市場はもっともあり得ない選択。この「不合理な」戦略を導いたのは、「世界のホンダ」という経営者のビジョン。ビジョンというコンセプトが先導し、組織はそのビジョンのコンテントを作っていく。

したがって著者が重視するのは、トップの持つコンセプトの重要性。また、そのコンテントを具体化する組織の力である。科学的な分析に基づいてトップダウンで行われる戦略に対し、トップの意思と社内の企業家精神から生まれる戦略。経営環境の不確実な時代に対応するのは、多くの創造・創発(ここには多くの失敗も含まれる)をなしうる、innovativeな企業である。

こうしてプロセス型戦略論が分析型戦略論に対置される。そしてこれは日本の企業が戦後取ってきた戦略なのだ。確かにウェルチによるGEの改革が象徴的に取り上げられる。しかしホンダ、スーパードライを巡るアサヒビールの決断、HOYAの多角化戦略なども詳細に取り上げられている。

200ページの新書にしては内容豊富。また議論がしっかりしていて読みやすい。古い本ではあるが、入門書としてうまくまとまっている良書。
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