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ジャック・ウェルチ、ジョン・バーン『ジャック・ウェルチ わが経営 <上>』


1981年から2001年までGEの会長を務めた人物の自伝。自らが会長時代に行った経営のポイントと、その背景になった考えを述べようとしている。こういう本は読む人によってそれぞれ得るものが違うのだろう。同じような問題にぶつかっている人はヒントを得るのだろうし、そうでない人は経営層という特殊な領域の話となる。

業績という事実を直視し、その領域で一位か二位になれない事業については再建・売却・閉鎖(Fix, Sell, Close)のいずれかとする。従業員についても優秀な人は残すが、業績の上がる見込みのない人は解雇する。ウェルチはこうした冷淡とも評される経営姿勢で知られている。本人曰く、こうした経営姿勢すなわち「勝つために全力で戦う、現実を直視する、硬軟使い分けて部下のやる気を引き出す、無理と思えるほど高い目標を掲げる、仕事がきちんとなし遂げられたかどうか執拗に確認する」(p.19)といったものは母親から叩きこまれた影響だそうだ。

会長に上り詰めるまでの話は案外にあっさりしている。特にGE最年少のゼネラル・マネジャーまでの話は短い。上司のルーベン・ガトフに、自分がゼネラル・マネジャーに値すると執拗にアピールしたくらいしかない(p.59f)。この過程では群れからいかに抜け出すかを考えていたという。上司の部下への質問はたいてい、確認でしかない。群れから抜け出るには与えられた質問の枠を超えて考え、上司の意表をつく新鮮な視点が必要だという(p.48)。ゼネラル・マネジャーへの過程が短い代わりに、そこから会長までの社内政治の話は長い。なかなかにドロドロした話が書かれている(p.105-144)。

会長になってまず挑んだのが官僚主義の改革だ。会社の文化を変えたことがその経営の根幹にある。経営層に対しておべっかを使う場だった社内会員組織エルファンと、原子力事業に行った改革が成功し、文化を変える発端となる(p.157-168)。最初の小さな成功例をもたらし、それを繰り返し伝えること。それが理念を浸透させていくポイント。時には、業績目標を達成していても理念に合わない人をやめさせる。理念を伝えるにはこのことが効き目がある(p.292f)。

人を容赦なく切る戦略は、建物を残して人だけを殺す中性子爆弾になぞらえて「ニュートロン・ジャック」と評された。本人はそれなりにショックを受けたそうだ。しかし本人の最終的な自己評価は次の通り、とてもアメリカ的と言えばそうだ。
皮肉なことだが、私は思うように成果をあげられない多くの社員のことをあれほど長い期間にわたって悩むべきではなかった。長い歳月を通し、私が一貫して思い知らされた教訓は、私の姿勢が多くの場合、慎重すぎたということだ。もっと早く旧来の組織構造を壊し、もっと迅速に低迷する事業を売却すべきだった。ほとんどのことはもっと早くすべきだったし、できたはずだ。いわゆるアメリカでもっとも厳しい経営者は、じつは、経営者としての厳しい心構えが不足していたのだ。(p.219)


もちろん、これは単なる冷淡さではない。評価で下位10%の、成長や昇進の見込みのない人間を残しておくことこそ、残酷であり、「間違った親切」なのだ。結論を先延ばしにすればするほど、本人の仕事の選択の幅は限られてしまう(p.255)。そうなる前に解放すべきなのだ。これには労働市場の流動性が高いことが前提だが。また、全社一律の支出カットや給料の凍結は一度も行ったことがない。これは現実を直視しておらず、経営しているとも、指導しているとも言えない。ダメな部分はダメとして直視すること。それは人を切るというより、職務をなくしたがゆえにそれに就いていた人がやめることになっただけなのだ(p.205f)。

人の採用については本人はあまりセンスが無かったそうだ。英語ができるかどうかを日本人の採用基準にしたり、外見や学歴に惑わされる、など(p.91f)。これについては採用に長けた人がカバーしていく。ウェルチはどんな人物がリーダーであるべきかを示す。例えば、GEのリーダーに必要な4つのEを定式化している。活力に満ち溢れ(Energy)、目標に向かって周りの人間の活力を引き出し(Energize)、難しい問題で結論をはっきりさせるだけの決断力があり(Edge)、言ったことを実行する実行力がある(Execute)という条件だ(p.251f)。

本書の後半になると、バルバドスでの休暇中に思いついたという「境界の無さ(Boundaryless)」というキーワードが現れる。これは確かに、グローバリゼーションや職場の多様性、部門間や会社を超えたつながりなどを一語で表現している。この試みでは、陸軍士官学校との合同クラスが印象的。そこでは、陸軍大佐からナンバーワン・ナンバーツー戦略は、一位か二位が可能であるように市場を狭く捉えるインセンティブがあると指摘している。自らの考えの根幹であったこの戦略を柔軟に考えなおす辺りは流石(p.310-315)。
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