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ランダル・ストロス『Yコンビネーター』


シリコンバレーのスタートアップ養成所、Yコンビネーターの内実。64組が参加した2011年夏学期を通じて著者は居合わせることを許され、内実をとても鮮やかに描いている。Yコンビネーターのやり方にはもちろん賛否両論あるものの、この本はなるべく中立的に、だが活き活きと表している。Yコンビネーターのちょっとした由来から始まり、2011年夏学期に参加するための面談、3ヶ月に渡る養成の様子、投資家にアイデアを発表するデモデー、そして少しの後日談が書かれている。

Yコンビネーターは比較的小さなオフィスしか持たない。それもパートナーのトレバー・ブラックウェルが経営するAnybotsという会社と同じ建物。各スタートアップにオフィススペースを提供する場合はインキュベーター、そうでない場合はアクセラレーターと呼ぶ(p.77)が、Yコンビネーターはアクセラレーターだ。離れたオフィスに行く時間があるならば、自宅でサービス開発すべきだというのがYコンビネーターの中心人物、ポール・グレアムの考え。

スタートアップとしてYコンビネーターに参加する人物の典型例は、20代半ばの白人かアジア系の男性ハッカー。Yコンビネーターの養成所も回を重ねるに従って多様化しているが、女性やヨーロッパの人間は少ない。女性についてはYコンビネーターが性差別をしているのではという疑念もあるようだが、そもそもスタートアップを志す母集団に男女比が大きいということ。20代半ばの若者は、まだ子供などの養う家族もなく住宅ローンもないため、リスクを負いやすい。その他にも、グレアムの求めるスタートアップ創業者の資質を備えている。「25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている」(p.45)。

スタートアップはただ新しい会社であればよいのではない。スケールしなければスタートアップではない(p.124f)。急速に成長する可能性があることが必要。そういうアイデアはなかなか生まれるものではないし、実現するのも難しい。だからYコンビネーターの投資戦略としては、可能性のある人々に等し並に投資すること。その典型は、創業者が株式の93%を所有し、Yコンビネーターが7%を所有する(p.156)。一つの特徴として、Yコンビネーターは命令するのではなく、あくまで助言する立場。この株式所有比率はそうした意味がある。

本書はスタートアップがぶつかる様々な場面を実際の事例で取り上げ、その都度、Yコンビネーターのパートナーからのアドバイスを書いている。ラップ歌詞を掲載してきたラップ・ジーニアスがロックの歌詞も掲載すべきか、そうだとしたら別サイトでなのか、などサービス拡張を悩むケース(p.147-156)。毎週10%の成長を目標にすること。そうした目標設定によって、短い期間でやるべきことが定まる(p.144f)。そうでなくとも、スタートアップにはやることが多いのだから。

また、コードを書くのと同じく、顧客を見つけ顧客の反応を掴むことの必要性。エアビーアンドビーに提案のチャンスさえ貰えなくてもまったく諦めない、企業向け動画サービスのヴィドヤードの姿勢は高く評価されている(p.184-191)。諦めないセールスアニマルであれと(p.216f)。顧客の反応を見てすばやく改善していくのがスタートアップ。

Yコンビネーターの養成所を出た後の相手となるベンチャーキャピタルとの付き合い方のアドバイスもなるほど。スタートアップはリスクが高く、可能性が分からない。それはベンチャーキャピタル側も同じ。結局、ある程度は直観や創業者の風貌・感じ・勢いなどが出資判断のなかに入ってくる。だから出資しない理由を追求しても意味がないのだ。単に縁がなかっただけと考えるべき。答えは聞け、理由は聞くな(p.302-320)。

著者、そしてポール・グレアムはスタートアップがアメリカ、特にシリコンバレーでしか生まれないとは考えていないようだ。スタートアップの集積に必要なのは、投資家とハッカー。ピッツバーグにはハッカーはいるが、投資家がない。マイアミには投資家がいるが、ハッカーがいない(p.413-415)。また、アメリカ人が他の国の人より大胆でエネルギッシュ、リスクを取れる人間であるわけではない。問題は、手本が欠けていること。民族性や文化の問題ではなく、身近に手本があるかどうかという純然に地理的問題だ(p.104f)。とはいえ、必要なのは「ハッカーたちの手に負えない気ままさを許容」することだとも言われている(p.415)。この部分はまさに文化的な問題だろう。
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