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マーク・ジョンソン『ホワイトスペース戦略』


いまひとつ。企業がいま利益を得ている事業領域であるコアスペースから、どのように新規事業領域であるホワイトスペースに踏み出していくか。そのためにはビジネスモデルの変革が必要だ。ビジネスモデルという言葉は使い古された感もある。本書ではビジネスモデルがどのような要素からなるのかを定義。そしてホワイトスペースに乗り出すために、どの要素をどう変えればいいのかを書いている。ちなみにこのホワイトスペースはその企業に相対的な概念。誰かのホワイトスペースは、他の誰かのコアスペースでありうる。
本書の目的は、ビジネスモデル・イノベーションを無計画・無秩序なプロセスではなく、計画的で予測可能なプロセスに変える手助けをすることにある。素晴らしいビジネスがどのように築かれるのかを明らかにし、歴史ある老舗企業であっても、ホワイトスペースに乗り出せば飛躍的な成長と抜本的な企業変革を成し遂げられることを示したい。(p.47)

ビジネスモデルは4つの要素からなるとされる。顧客価値提案、利益方程式、主要経営資源、主要業務プロセス(p.52-54)。ホワイトスペースに向けたビジネスモデルを構築する際、何よりも顧客価値提案こそ鍵。「変革を実践するためには、顧客に価値を提供することをすべてに優先させて考える勇気が必要だ」(p.257)。どのような価値を顧客に提案すればいいか。有名なドリルと穴の例が引かれる。顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が開けたいのだ。つまり、顧客の欲しがるものではなく、解決しがっている事柄(本書はジョブというが、これはイシューと言うべきだ)こそ重要なのだ(p.55)。ホワイトスペースを探ろうとして、顧客ニーズに基づく調査を行うのは愚か。それは既存の事業領域から発想するに過ぎない。顧客は、何が欲しいかと聞かれれば、既存の物の延長線上で答える。そうではなく、顧客が解決したいイシューを把握することが、ホワイトスペースでの価値提案をもたらす(p.176)。なお顧客のイシューには、機能によって解決されるものだけではなく、情緒的に解決されるもの(ファッションなど美的領域のもの)、社会的に解決されるもの(自己承認欲求を叶えるものなど)もあることに注意(p.180-184)。

利益方程式は収益モデル、コスト構造、一単位あたり目標利益率、経営資源の回転率の4つの変数からなるとされる(p.63-74)。4つに分けて掲げているのは、単純に一単位あたり利益率を追求することのないように、ということから(p.71)。新規事業に乗り出すのだから、利益率が当初は低いのは当たり前だ。収益モデルやコスト構造の妥当性を問うべきだ。利益方程式を検討にあたっては、複数の仮説をマネジメントすることが重要。ビジネスモデルを実際に投入しながら検証し、欠陥があれば修正するといったトライ&エラーを繰り返す(p.194-200)。

ビジネスモデルの最後の二つの要素、主要経営資源と主要業務プロセスについては、本書ではあまりまとまったことは書かれていない。既存事業からの影響を排除し、経営層が独立した権限を与えるべき、といったくらい。本書の一つの問題だとも言える。既存の事業からの発想を入れてしまうことで、ビジネスモデルが曖昧になってしまう失敗例としては、デルタ航空のLCCであるソングが、サウスウェスト航空との対比で挙げられている(p.207-213)。

ビジネスモデルは三つに類型化されている(p.138)。専門家がそれぞれ顧客個別にイシューの解決を行うソリューション工房型。パターンや法則など規格化された状態で、大量に低コストで解決するバリュー付加プロセス型(これは何に対してバリューが付加されているのだろうか)。そしてシェアリングエコノミーなど、顧客間で交換・共有・売買するプラットフォームを設定して解決する、ネットワーク促進型。

新たなビジネスモデルが必要となるのはいつか。それは、顧客のイシューを解決するのに、以下のいずれかの問題が発生するとき。
・既存の利益方程式、とくに間接費のコスト構造と経営資源の回転率の一方または両方を変更しなくてはならない場合。
・主要経営資源・業務プロセスを新たに多数導入しなくてはならない場合。
・事業をおこなうために、これまでとはまったく異なるルールや規範、基準を取り入れなくてはならない場合。(p.90)

ホワイトスペースは、三種類に分けられる。まず既に身近に存在するが、その企業にとっては新規である事業領域。これは内なるホワイトスペースと呼ばれる。ザイアメターという別ブランドを立ち上げ、シリコン製品でコスト・リーダーシップ戦略を取ったダウ・コーニングの例(p.92-107)。また、建築工具の売り切りから、リースによる工具管理サービスに転換したヒルティの例(p.109-115)。どちらも成熟期にある市場で取られる戦略と言える。

二つ目のホワイトスペースは、既存の市場ではなく、いま消費者でない人々を消費者にしようとするもの。これは、かなたのホワイトスペースと呼ばれる。新たな顧客の開拓であり、難易度が高いだろう。タタ・モーターズの10万ルピー自動車の話や、インド農村の女性たちを販売員として組織したヒンドゥスタン・ユニリーバのビジネスモデル構築の例がある(p.122-132)。これらの例のように、特にボトム・オブ・ピラミッドを対象としたビジネスモデルは、既存のものが通用しないのが常だ。

三つ目のホワイトスペースは、技術や政策の変化によって生まれるもの。いままでは不可能だった事が技術革新によって可能になったり、政府の規制緩和により新たな市場が開かれる。インターネットがもっとも分かりやすいだろう。これは、はざまのホワイトスペースと呼ばれる。車体の販売ではなく、バッテリーの交換で利益を得るようにした電気自動車のベタープレイスの例がある(p.156-165)。

新たなビジネスモデルをホワイトスペースに導入していくフェーズ分けとして、育成期、加速期、移行期がある(p.203)。顧客のイシューを本当に解決しているのか、ビジネスモデルを修正し続ける育成期。きちんとした利益が確保できるようにビジネスモデルを洗練していく加速期。そして既存事業と統合するのか(スタートアップでない場合)、独立して今後もやっていくのか(分社化など)を判断する移行期。けれども、育成期が1-3年間、加速期が2-5年間、移行期が1-3年間とされているのが驚きだ。こんなのんびりしたペースで進んでいたら、あっという間に他の企業に負けるだろう。

新規事業領域とビジネスモデルの話を考えるヒントになる本だろう。挙げられている例は言及した以外ではiPodとかアマゾンとか、けっこう典型的なものばかり。そこまで独自性は感じない。
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